人は怖いものについて語る時、妙に目がきらきらしている

雪下まゆがイラストを、大島依提亜がデザインを担当したオルタナティブポスター。© 2025「恐怖心展」実行委員会

――『行方不明展』以上にメッセージ性が強い展示になっているのかなと、うかがっていて感じましたが。

 それはあるかもしれません。人って怖いものについて語る時、妙に目がきらきらしていませんか? やや変な喩えですが、小学生の時、彫刻刀で指を切ってしまったという体験談をする時、みんな妙に嬉しそうなんですよ(笑)。痛かった、こんなに血が出ちゃったと言いながら、それを語りに昇華して、記憶の中に居場所を与えている。『恐怖心展』は擬似的にそういう体験ができる場で、人がどのように恐怖心に向き合ったか、約50通りのパターンで見ることができます。

Franz K Endoによるティザー動画も公開中。

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「新たな価値観を提供する」みたいな堅苦しい言い方をするつもりはないですが、夏の怖い展示を楽しみながら、恐怖心に対する解像度をちょっとあげてもらえたら嬉しいかなと思います。

――ちょっと気が早いですが、『恐怖心展』の次にやってみたい企画はありますか。

 マジで何も考えていないです(笑)。ホラー作家が恐怖心を扱うって、最終回に近いじゃないですか。だから本当に思いつかないんですけど、何かやることになったらまた大森さんや闇さんと一緒に考えます。最近は展示会を使ってストーリーを語るという手法が一般的になってきたので、そこにどう逆張りしていくかも考えどころですね。次に繋げるためにもまずは『恐怖心展』が話題になってほしい。この夏はぜひ東京の会場に足を運んでみてください。

梨(なし)

インターネットを中心に活動するホラー作家。2022年、『かわいそ笑』で書籍デビュー。「その怪文書を読みましたか」「行方不明展」「恐怖心展」等展覧会の企画から、イベント・テレビ番組「祓除」構成、映像作品「マルクト情報テレビ」 「マルクト ~あなた、誰ですか?~」 原案・監修、漫画『コワい話は≠くだけで。』原作など、多方面で活躍。他の著書に『ここにひとつの□がある』『お前の死因にとびきりの恐怖を』『自由慄』『6』や、『つねにすでに』(株式会社闇との共著)、謎解きゲーム集『5分間リアル脱出ゲーム おしまい』(SCRAPとの共著)などがある。