ときには夫に代わって、土下座しなければいけないときも……。政治家の妻はいかにして政治家である夫を支えるのか? 知られざるその苦労とは? 千葉県鎌ケ谷市の市長を5期務めた元政治家の清水聖士氏の新刊『市長たじたじ日記――落下傘候補から、5期19年、市長務めました』(三五館シンシャ)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/続きを読む)

写真はイメージ ©getty

◆◆◆

政治家の妻はなぜ大変か?

 政治家の妻はたいへんである。選挙活動になれば、候補者並みか、それ以上に動き回らなければならない。

ADVERTISEMENT

 現職である私は選挙が公示される前には動きづらい。早いうちにあいさつ回りなどをすると、「仕事をほっぽり出して選挙運動をやっている」と批判される。

 だから、妻が代役を果たすことになる。

 また、公示前に投票を得るための行為をすると事前運動となり公職選挙法違反になるが、市長の妻が「主人がいつもお世話になっております」とあいさつするだけなら問題ない。その点でも妻の動きは重要になる。

 2期目の選挙では共産党を除くオール与党になった。これにより支援してくれる関係者が増えた。自治会長や農家組合長、市議会議員という人たちが連れ回し役となり、あいさつに回る場所も激増した。しかも1期目の選挙で私と手分けして回った分がすべて妻の担当になり、妻の負担は甚大になった。

 2期目以降、市長選挙公示のほぼ1カ月前から、妻のスケジュール表は埋まった。月曜日は××地区の自治会長、火曜日は第3農家組合長……といった具合に、連れ回し役の名前とあいさつ先が選挙事務所のホワイトボードのスケジュール表にびっちりと書き込まれていた。

 あいさつ回りは土日を問わず、午前9時すぎからスタートし、昼食をはさんで、午後5時すぎまで続く。限られた時間でできるだけ多くの訪問先を回らなければならないため、案内役が躊躇する場所でも、妻自らがずんずん相手宅の敷地内に入っていくようになった。妻は選挙向きの性格だった。