「名門の私立小学校やインターに入れなければいけないと…」子どもを朝鮮学校に通わせなかったワケ

――子どもたちの教育に関しては、自身も通った朝鮮学校に通わせたいと考えたのですか?

鄭大世 子どもに新たな世界を切り拓かせるか、同じ道を歩ませるかで随分悩みました。

 夫婦の共通認識としては、常識に縛られることのない自由な発想と創造、行動を尊重してくれる学校に入れたいと話していて。

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  だから、FC町田ゼルビアに移籍したタイミングで3校ほどインターナショナルスクールを受けたんですけど、英語がそもそも話せないので入れなかったんです。

 でも日本の公立の小学校に入れると、僕自身が“朝鮮学校出身の成功者”で、母方の家系のこととかもあって、周辺がざわついてしまう。

 

――難しい判断に迫られていた。

鄭大世 結婚したので親は関係ないのですが、複雑な立場というのもあって。親に大義名分を示すためにも、目的がはっきりした名門の私立小学校やインターに入れなければいけないと思ってました。

 それで私立の学校に妻が電話をしたら、「すぐに入れますよ」と言うんですよ。「え、私立なのにそんな簡単に入れるの?」と思っていたら、私立じゃなく「市立」の学校に電話していて(笑)。

 結局その後、和光鶴川小学校に入学して、今は運良く韓国のインターに通ってるんですが、それでも最初の頃は朝鮮学校との葛藤がありましたし、運動会や発表会の内容が朝鮮学校と違うのを見ると一抹の寂しさみたいなのはありますね。

「愛国心を否定する気は全くないけど、今は価値観が変化してる」

――なぜ、当初は朝鮮学校にこだわったのでしょう?

鄭大世 こだわっていたわけではなく、子どもが自分と違う道を歩むと違和感や不安感などを抱くのが親の心理らしいんですよね。僕もそんな気持ちになりました。

 朝鮮学校はルーツを学び、胸を張って生きていくのが大まかな方針で、僕もそういう教育を受けてきました。

 ただ、歳を重ねて物事を俯瞰して見られるようになってからは、それを利用される側面も気になって。

 愛国心を否定する気は全くないのですが、子どもたちには過去に縛られずに、個を磨いて欲しいと思うようになったんです。とはいえ、当時はかなり気持ちが揺れました。

 

――ご自身が朝鮮学校に通っていた時と比べると、時代も変化している?

鄭大世 在日コリアンの方が国籍を変えて旅行を楽しんでいるのを見ると、今は価値観が変化してるのは明白ですね。国籍に縛られることなく、やりたいことがあるなら自由に選択すればいいと思ってます。

 ドイツにいた時も、パスポートを3つも4つも持ってる人がたくさんいたから、いずれこういう時代に変わってくんだろうなと思っていました。