怒られて絶版になったホームレスルポの著書

――ホームレスがテーマのらむさんの著書は多数ありますが、方向性に振り幅がありますね。「そりゃ怒られるだろうな」っていう悪ノリ風の1冊目・2冊目から、2009年の『ホームレスが流した涙』は人間ドラマに焦点を当てたもの。2020年の『ホームレス消滅』は新書らしいちょっと硬い感じで。

らむ 僕としてはデータはデータ。アウトプットの仕方はそれぞれ違うんですが、結局やっていることは同じなんですよ。まあ、編集部の空気を読んでる感じ?(笑)ですかね。

――初めて出したホームレスの本は絶版になったそうですが……怒られて?

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らむ もちろん、ちょいちょい怒られてますよ(笑)。1冊目は、ほぼほぼ自分の方針だったんですけど、2冊目に関していうと僕がこうしたかったわけじゃなくて、1冊目のファンだっていう編集さんが「あれをもう1回やりましょう」って。で、やっぱり怒られた。

 もう絶版になった昔の本を「電子書籍で出したら?」って言ってもらっても「データがないからなあ」って今まではあきらめていたんだけど、今なら書き起こせるソフトがあるので、意外と出せるかな、と考えてます。

――昔の本だと、コンプライアンス的に結構微妙ですね。

らむ コンプラ的には全くダメです。僕は「コンプラダメ星」からやってきてるんでね(笑)。ライターとして正義ではやってないので、何言われても平気です。

――90年代くらいまで、雑誌や本って倫理的にもかなりグレーでしたよね。

らむ いやもう、ほとんどダメですよ! 無茶苦茶だったもの。コンプライアンスとかなかったし、ハラスメントって言葉がちょっと流行り出したってくらいで。実際、当時は何とも思ってなかったんです。だから、最近はすごくちゃんとしてきたなって思います。

©︎文藝春秋

――出した本のせいで捕まりそうになったとか、取材で犯罪に巻き込まれたことはないんですか?

らむ なくはないです。ある媒体に裏ビデオを取り上げて「こんなひどいのがあります」って記事を載せたら、要は「それ自体が頒布だろ?」ってことで、編集者が逮捕されたんだけど、その記事を頼まれて書いたのが僕だった。で、事情聴取ではあったけど、呼ばれて。まあ、それくらいですね。おかげさまで前科はないです。

自警団に囲まれ「殴る!」と凄まれて

――ライターになりたての頃、取材で怖い目に遭ったりもしましたか。

らむ まあ、ホームレスの人に怒鳴られるくらいかな? こちらから一方的に取材をしていたので怒る人もいるのは当然なんですが。まあ、怒っちゃったら撤退すればいいわけで、それは当時も今も同じです。

 とある地域の人は濃かったですね、急にキスされたりとか、そこそこ怖い対応をする人が多かったんで、SNSで「◯◯まわりの取材は全体的に気が荒い人が多かった」って書いたら「決めつけて書くな、ボケェェェ!!」ってリプされて「いや、めっちゃ荒いやん……」って思ったりして(笑)。

 あと中年女性のホームレスに話聞いていたら急に「殺されるー」って叫ばれちゃって、そうしたら自警団みたいなのが現れて。30歳~40歳くらいの、ホームレス仲間なのか若い人たちにワーっと囲まれちゃって「殴る!」と。だから「殴らないでください」って言って、なんとか殴られないですんだっていう思い出もあります。