「アジア甲子園」で工藤公康からかけられた言葉

——実際に2024年の12月に「第1回アジア甲子園」が開催されました。実際に開催してみて思ったことはありますか。

アジア甲子園のグラウンドで

柴田 東南アジアの子ってゆっくり動くんです。1試合を7イニング制または2時間打ち切りのルールで開催したのですが、初日はほとんどの試合が3イニングくらいで終わってしまったんですね。選手たちからは「もっとやらせてくれ」という声も上がったのですが、日本の高校野球は2時間で9イニングやっているわけです。

 なので、その説明をしっかりしました。攻守交代はダッシュしているし、サイン交換に時間をかけないし、ピッチャーも投球間に無駄なことをしない。そうやって計算すれば、7イニングできるよね、というふうに説明しました。そうすると、現地の子たちもきびきびと動くようになって、最終的には6イニングはできるようになっていました。

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 無理やりでなく、「野球をやりたい」という本人たちの主体的な気持ちから、いい変化が生じているのが実感できたので、とてもよかったです。

——現地の選手たちのレベルは柴田さんから見てどうですか。

柴田 日本の高校野球でいうと、地方大会の1回戦か2回戦レベルだというのは正直思います。全体でいうとレベルは高くないですが、光るものを持っている選手は何人かいました。そういう子たちに生きる道を開いてあげたい思いもあって、参加年齢を14~18歳にしています。もしかしたら、ポテンシャルの高い選手が日本の高校や大学に進学して、実力を伸ばしNPBやMLBにいけるかもしれないと思うので。

 

——愛工大名電の先輩である工藤公康さんも参加していましたね。

柴田 アジア甲子園にすごく共感してくださって。野球の競技人口をどんどん広めていかないと、日本の野球も衰退してしまうという危機意識があるとのことでした。偉大すぎる先輩なのでそれまで一度も話す機会がなかったのですが、今回工藤さんが「病気を乗り越えた柴田くんだからやる意味が大きい」と言ってくださり、とても嬉しかったです。

西岡剛とマレーシア・ベトナムで野球教室も

——ほかにプロ野球から関与している人いますか。

柴田 直接的な関与ではないんですけど、坂本勇人選手、山川穂高選手、藤浪晋太郎選手、森友哉選手、山岡泰輔選手、小杉陽太さん、それから明治大同期の野村、阿部、島内が応援メッセージを送ってくれました。

 また、アジア甲子園に付随する単発的なプロジェクトとして、今年の3月にマレーシアとベトナムで野球教室を開催した際には西岡剛さんが来てくれるなど、球界を代表するようなプロ野球関係者たちが「アジアを巻き込んだ野球の普及活動にしてほしい」とご協力くださっています。

——今年もアジア甲子園は開催するんですか。

柴田 はい。今年も開催地はインドネシアですが、東南アジア圏4~5ヶ国からチームが参加する予定です。インドネシア、シンガポール、マレーシア、フィリピン、そしてもう一カ国がタイかベトナムか、という感じです。また、参加チームも昨年の8から16に倍増します。

——スケールが大きくなりますね。

柴田 三田先生からは「そんなに急がなくてもいいんじゃない?」というアドバイスもいただいたのですが、当初描いていた“東南アジア10カ国を巻き込んだアジア甲子園”の実現を早く見たいんです。いまはそのための準備の真っ最中なので、これからががんばりどころですね。

柴田さんが代表を務める一般社団法人 海外野球振興協会 NB.ACADEMY

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