『ゼルダ』の謎解きを生み出した宮本の洞窟探検
こうした謎解きのほとんどは空間探索に関係するものであり、その参考になっているのが宮本の幼少期の洞窟探検だ。
宮本は自然のなかを冒険し、生い茂る森のなかで遊んだ。そして洞窟を見つけると、長い時間をかけて隅々まで探索した。
『ゼルダ』の開発が始まった当初の資料からは、ダンジョン探索のゲームが想定されていたことがわかる。
しかしチームは最終的に、複数レベルのダンジョンと、(マリオのような)地上と地下の要素を含んだゲームに変更した。さらに、剣を投げたり武器を集めたりするアドベンチャーゲームではあるが、核にあるのは探索と謎解きのゲームとなった。
『ゼルダの伝説』における謎解きの実に多くが、プレイヤーに対する空間的なチャレンジだ──ある空間で見つけた(たいていは隠されている)アイテムを、別の空間で応用する。また、いったん地下の迷宮に入ると、マップがゲーム体験の一要素となり、画面の左上に常に表示される(図1)。
このゲームは難解であったため、発売されてすぐに『Tips and Tactics』という攻略本も登場し、より包括的なマップや謎解きの詳細な説明が掲載された(ただしエンディングは明かされない)。
「Nintendo Fun Club News」(ニンテンドー・ファンクラブの会報誌)や任天堂アメリカによる公式月刊誌「Nintendo Power」のバックナンバーを読んでみて面白いのは、空間的な謎解きに困っているプレイヤーを助けたり、他のプレイヤーが知らないかもしれない手がかりを提供したりするための手紙やコラムが非常に多いことだ。
とりわけ面白いのが、1988年に「Nintendo Fun Club News」のMail Bagコーナーに掲載された手紙だ。そのなかでマリリン・リー・リードは次のように記している。
ジェフを救いに来なければなりません!
親愛なる任天堂さま。
今年、私たちはニンテンドー・エンターテインメント・システム〔海外におけるファミコンの呼び名〕と『スーパーマリオブラザーズ』のソフトを手に入れました。このマシンでジェフ(30歳)がとても楽しんでいる様子を見て、私は急いで『ゼルダの伝説』を買いに行きました。
それ以来、ジェフは多くても6言くらいしか話さなくなり、睡眠時間も昔は8時間ほどでしたが今はちょっと仮眠をとるくらいになりました(中略)
夫であるジェフには、第5の(もしくは第6の?)城を脱出する方法や、第8の(もしくは第9の?)城に入る方法や、ゼルダと呼ばれる女性を救うためにデスマウンテンへと向かう方法を教えてくれるアドバイス(もしくはマップ)が必要です──それも早急に!
世界はゼルダを救いに行きますが、御社の素晴らしい方々はジェフを救いに来なければなりません!
どうか急いでください。(“Mail Bag” 1988, 26)
