手紙に表れる「宮本作品のカギ」

 この手紙(およびその他多くの手紙)に、宮本作品のカギが見てとれる。本書でも後に詳しく語るが、そのカギとは協力(コラボレーション)だ。

『マリオ』では、アーケードゲームのようなマルチプレイヤーモードを通じて協力プレイができた。

 しかし、『ゼルダ』はシングルプレイヤーゲームであり、プレイヤーは孤独にならざるをえない。

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 だが宮本は、人々が職場に行き、ゲームについて話し、ヒントを伝え合い、ゲーム体験をめぐるコミュニケーションを介してコミュニティが生まれていってほしいと語っている。

 この手紙は、配偶者がゲームについて語っている証であるだけでなく、人々がより広いコミュニティに助けを求めていることの表われでもある。

 このゲームは、人の助けなしにはクリアが難しいゲームなのだ。

次の記事に続く “最初期のオープンワールド”『スーパーマリオ64』で任天堂・宮本茂が仕組んだ「カメラマン・ジュゲム」の秘密