参院選では敗北したものの、石破首相は続投を表明。しかし、それは石破首相にとって取るべき道だったのか。永田町のインサイド情報を、月刊文藝春秋の名物政治コラム「赤坂太郎」から一部を紹介します。
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森山幹事長の入れ知恵
投開票日の翌日、石破茂首相は「比較第一党としての責任」「明日にも起きるかもしれない首都直下型地震」と手前みその屁理屈を並べて、続投を正当化した。「比較第一党」は幹事長の森山裕の入れ知恵で、石破は「そんな言い方もできるのですね」とすぐに飛びついた。「首都直下型地震」は防災に熱心な石破が自分で付け加えた。ピント外れの開き直りは、その思惑とは裏腹に、自らへの往復ビンタとなって返ってきた。
国民の反発を買ったばかりか、全国の自民党県連から辞任を求める声が相次いだ。だが、昨年の総裁選で争った茂木敏充や高市早苗の息のかかった県連が辞任を要求してきたため、石破は態度を硬化させた。
かくして、関税交渉の妥結後も、振り上げた続投のこぶしを降ろせなくなり、辞意表明のタイミングを完全に見失ってしまったのだ。
振り返れば、参院選で石破は誤算の連続だった。
物価対策の一律給付金に、石破はバラマキだと批判されると危惧していた。だが、公明党・創価学会の強い意向を受けた自民党選対委員長の木原誠二が譲らなかった。国民1人2万円に、子どもや住民税非課税世帯には2万円を追加して、「バラマキではない」と強弁したところで、その迷走ぶりは明らかだった。
野党は一斉に消費税減税を訴え、「日本人ファースト」を掲げてナショナリズムを扇動する参政党が自民党の支持層を削って足元を揺さぶる。そんな挟撃される展開も、想像さえしていなかった。
