「ふつうの会社員」が顔出しで活動すると決めた理由

――これまではSNSでのご活動が中心でしたが、最近は顔出しで取材を受けたりイベントに出演されたりしていますよね。ご心境の変化があったんでしょうか。

ホリーニョ 自分は沖縄出身でなく、兵庫出身で大阪在住のIT企業に勤める会社員で、沖縄の歴史とは縁遠い立場です。学校の授業でも沖縄の歴史について学んだ記憶はあまりありません。なので、学びながらSNSでの発信をしていく中で、自分の特徴や属性は強調しないほうがいいのかなという思いが当初はありました。

 自分よりもカラー化写真のほうに興味を持ってもらえたらという方針で5年間ぐらい活動してきた感じです。顔だけではなく、個人的な感想や意見もあまり表に出さずにやってきました。

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 でも『カラー化写真で見る沖縄』を出版するにあたって、沖縄の方々に手に取っていただきたいということに加えて、沖縄戦について知らない本土の方々にも広く届けたいという強い想いがありました。そのために新聞やテレビに出たときに顔を隠していたら、せっかくの“伝える機会”を失ってしまうかもと思ったんです。

沖縄の中学校で平和教育を目的に行われた、カラー化写真のパネル展を観覧するホリーニョさん(写真=本人提供)

 僕みたいな「本土の一般男性」が自分なりに勉強しながらカラー化に取り組んで、沖縄の歴史を広めたいと思って活動している……ということも合わせて知っていただければ、そんな背景に共感した人が本を手に取ってくださる機会も増えるかもと思いました。だから最近は表に出て活動しています。

――本を出してからの5か月間は、沖縄でもいろんな方との出会いがあったとか。

ホリーニョ まず沖縄のテレビや新聞、ラジオの方々が「一緒に広げていきましょう」と取り上げてくださったのが嬉しかったです。僕の活動をSNSでずっと見てくださっていた方もいて、沖縄のメディアの皆さんが応援してくださいました。

 あとは沖縄のジュンク堂書店那覇店にいるときに「この時間に店頭にいるんで本の感想を聴かせてください〜」ってSNSで声をかけたら、絵や音楽のアーティストが何人か来てくださいました。表現活動で自分のルーツやアイデンティティと向き合う中で、僕のカラー化写真を知ってくれたらしいんです。「沖縄の歴史を踏まえて制作したい」という想いのもと、カラー化写真でイメージを膨らませて作品をアウトプットしていくとおっしゃっていて、そんな所でもご活用いただけるんだと嬉しい驚きがありました。

 それから、沖縄戦を経験されたご両親を持つ方からいただいた感想のメッセージが特に心に強く残っています。「自分の父や母は戦争について多くを語らずに亡くなってしまったけれど、この本を読んで親たちの体験に思いを馳せることができた」「沖縄戦で心が傷ついた両親には全く話してもらえなかったかつての沖縄について、今になってカラー化写真を通じて風景やイメージに触れることができた」と。そういってもらえてありがたいし、やってきてよかったなって本当に思いました。

次の記事に続く 当時7歳、米軍から逃れて入ったガマを出る姿を写真に撮られた「沖縄の少年」が…戦後80年、時を越えて同じ場所で撮られた“少年の現在の姿”

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。