夏休み、「子どもにキャンプの体験を」と企画する家庭は多いだろう。
『子どもの体験 学びと格差』(おおたとしまさ著)の第二章、「子どもにとって本当に必要な体験とは何か?」にも紹介されたYMCAが目指すのは、どのようなキャンプなのか。
キャンプは自然体験ではない!?
近年のキャンプブームで、日本では「キャンプ=自然体験」という認識が定着している。しかし、100年以上前にアメリカで発祥し、YMCAが日本に導入してきた「組織キャンプ」の本来の目的は全く違うと、神戸YMCAでキャンプディレクターを務める阪田晃一さんは言う。
「僕たちが専門とする北米発祥の『組織キャンプ』は自然体験を目的としているわけではなく、民主主義教育の一環です。多くの人々と民主的な営みを体験するためにデザインされたキャンプといえます」
日本でキャンプの目的が自然体験だといわれるようになったのは、実はここ10年ほどのこと。1990年代にキャンプにおける環境教育という一部分だけが取り入れられ、本質が見失われてしまったのだという。
北米のキャンプでは、参加者は10人規模の生活グループに割り当てられ、グループ単位で数週間、同じキャビンで生活をともにする。各グループにはキャンプカウンセラーと呼ばれる世話役がつく。
グループがいくつも集まった100人規模の「ビレッジ」という単位もある。高学年女子のビレッジや、あえてカテゴリーでくくったほうが過ごしやすい障害者ユニットとしてのビレッジなど、ビレッジごとにエリアが分けられる。自然豊かなキャンプ場に、いくつかの村が点在しているイメージだ。
日本では3泊4日程度で「キャンプ」と呼ぶが、北米のキャンプは通常2週間以上にわたって行われる。
キャンプ場にはカヌーや山登り、サイクリングなど様々なアクティビティが用意されている。午前中はアクティビティの時間で、好きなものを各々に選んで参加する。午後はそれぞれ自由に過ごす。勉強していてもいいし、ぼーっとしていてもいい。カウンセラーはその様子を観察する。食事や夜のキャビンでみんなでお互いの体験を共有する。
広大なキャンパスを舞台にハウス(寮)単位で集団生活しながらそれぞれの学問分野を学ぶ欧米の大学の構造と同じだ。

