オカッパ頭で、年齢は“永遠の五歳”。そんな少女、チコちゃんの人気が急騰中である。

 歳に似合わず、お利口さんのチコちゃんだから、世の中に知らぬことは何もない。

 MCの岡村隆史など大人の出演者を相手に「信号の緑をなぜ青信号というの?」などといった素朴系の疑問をぶつけて、大人がオタオタしていると、二頭身半の頭はさらに巨大化し、目から黄色い炎、頭からは蒸気を噴出させ、怒りを爆発させる。

ADVERTISEMENT

「ボーッと生きてんじゃねえよ!」。見事な決めゼリフである。生意気な五歳の少女に怒鳴られて、タレントだけでなく、私も含めた視聴者ほぼ全員が歓喜を覚えている。

©文藝春秋

 かつて新宿ゴールデン街の文壇バーには「オマエも直木賞とってからは、ロクなものも書かないで、堕落したな」と作家に悪態をつく名物ママがいた。理不尽な暴言に客が怒るかと思えば、誰も「またママに怒られちゃったよ」と相好を崩し喜んだという。

 そんなエピソードも連想させるチコちゃん人気だ。私だってチコちゃんに叱ってほしい。でも、これで流行語大賞は決まりですねと口を滑らせたりしたら、眼光鋭く「流行語大賞って、そもそも何を規準に選ぶの?」とか、執拗な追及が始まるはずだ。

 チコちゃんの声の吹き替えは、キム兄こと木村祐一だけど、テンポの良さが抜群。ゲスト回答者に緩急つけて質問をぶつけ、最後に決めゼリフを炸裂させる。お見事。

チコちゃんの吹き替え担当のキム兄 ©文藝春秋

 クイズ形式の雑学情報番組って、雑学それ自体にあまりインパクトはない。しかしこの番組には、ときどきマジで仰天させられることがある。

 ゲストのかたせ梨乃に「なぜプールに入ると目が赤くなるの?」とチコちゃん。「塩素のせい……」と答える梨乃さんに強烈な罵倒が飛ぶ。

 その直後にクールなナレーションが告げる。「プールの水に誰かのおしっこが入ってる疑惑」。さすがNHKきっての実力派アナ、森田美由紀さんである。ここから専門家が登場して、プール特有の匂いも、目が赤くなるのも、塩素のせいじゃないと解説する。

 誰かがじゃなくって、多くの人間がおしっこをすることで、目は充血し、あの匂いも発生するのだと証明していく。

 なんでも知ってるチコちゃんはプールの謎まで教えてくれるだけでなく、日々、ボーッと生きてるニッポン国民を叱ってもくれる。チコちゃんのおかげで、ニッポンが覚醒する日も近いかもしれない。

『チコちゃんに叱られる!』
NHK総合 金 19:57〜20:42
http://www4.nhk.or.jp/chikochan/