3人の息子もスタンフォード大に進学

 スタンフォード大学には後年、3人の息子(三男は1996年に誕生)もあいついで進学した。これをきっかけに近年は、“アグネス流子育て法・教育法”の本の執筆に力を入れ、《還暦を過ぎて、また新しいステージが開けたような気がしますね》とやりがいを見出している(『NHK きょうの健康』2022年12月号)。

 アグネスは1998年に日本ユニセフ協会大使に就任、世界各地を飛び回っては、戦争や人身売買などさまざまな過酷な状況に置かれた子供たちと接し、状況の報告とともに問題の解決に携わってきた。2016年にはその活動が認められ、ユニセフ・アジア親善大使(地域大使)に就任し、世界の子供たちの権利向上のための支援活動に携わるなど、さらに活動の幅を広げている。

ユニセフハウス・オープニング記念式典で雅子さま(右)と談笑するアグネス〔2001年撮影〕 ©文藝春秋

「歌があれば慰められるんです」

 そんなユニセフの活動のなかで、彼女が本業である歌手として、歌は最高のコミュニケーションであることを再確認する出来事もあった。それは2000年に東ティモールを訪れたときのこと。同国は前年の住民投票によりインドネシアからの独立が決まったものの、独立に反対する勢力が民兵組織を使って虐殺と破壊を繰り返していた。

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 このときの訪問の目的の一つは、騒乱で破壊された学校の再建だった。首都・ディリにユニセフが仮設した教室で、アグネスは700人の子供たちを相手に「むすんでひらいて」や「ロンドン橋」といった童謡を、歌うスピードを徐々に上げたり、歌詞を現地語に当てはめて歌ったりしながら教えた。子供たちは踊りながら彼女と一緒に歌い、楽しいひとときをすごしたようだ。この経験から彼女は、《歌があれば慰められるんです。一人で口ずさむと癒される。不安なときに大声で歌うと勇気がわくんです。自分を励ますことができるんです》と力説している(『潮』2000年9月号)。