もし藤井七冠が研究会に現れたら…

――深浦九段は地方在住の弟子が多いので、普段からネット将棋を重宝していますか?

深浦 そうですね。やはり、弟子の実力を見るには、将棋を指すのがいちばんですから。でも不定期ですよ。佐々木大地(七段)に、「この日に弟子を2、3人見てくれないか?」とお願いしたこともあります。

杉本 へぇー。もともと、佐々木くんはその弟子たちをよく知っているんですか。

ADVERTISEMENT

深浦 九州に行ったときに会ったことはあるので、面識はあります。若手棋士に教わることで、奨励会員も学ぶものが多いと思いました。

杉本 師匠の教えを、忠実に佐々木くんは守ってくれるんだなぁ。

深浦 1日だけだったらいいかなと。あんまり多いと、さすがにね。

 

杉本 嫌そうな顔をされちゃうかな(笑)。しかしそれを頼めるのは羨ましいですね。うちはちょっと頼みにくい。齊藤裕也(四段)くんはやってくれるかもしれないけど、藤井くんにはいいにくいな。

深浦 藤井さんがいたらびっくりしますよ(笑)。

杉本 そうですね。それを聞きつけた他の棋士がたくさんやってきそうです(笑)。

「将棋の内容を突っ込まれると、こちらもねぇ…」

――佐々木七段の教え方を見ていて「それは君に自分もいったことあるぞ」というのはありますか。

深浦 彼と私は教え方が違います。佐々木は自分がその局面をどう考えるかというのを伝えるだけで、「ここはこう指さないとだめ」とはいいません。若手らしい現代風の教え方というか、常に自分の考え方を参考にしてもらうというやり方を意識しているような気がします。

――深浦九段は佐々木七段にどういうことを教えてきましたか。

深浦 いまは佐々木の将棋のほうが上ですから、内容を具体的に指摘することはないです。ただ、やっぱり気になることはあるので、最近もちょっと叱りました。

杉本 え、それは最近の話ですか。ちょっと想像がつかない光景だなぁ。絶対、自分には真似できません。

深浦 順位戦(持ち時間が各6時間の長時間)が迫っているのに、自分との練習将棋で20分の持ち時間を半分しか使わなかったんですよ。結果は自分が負けましたけど(苦笑)。

 でも、順位戦はじっくり考えないとダメじゃないですか。いくら研究範囲の将棋でも、早指しで飛ばす悪い癖がついちゃったらよくありません。でも、その将棋の内容を突っ込まれると、こちらもねぇ……。まさに「師匠はつらいよ」ですよ。

 

杉本 ですよね。「ここは研究範囲で考える必要がないと思いました」とかいわれたら、それ以上いえなくなりそうな気がしますが。実際はどうでしたか。

深浦 感想戦で確認したら、研究範囲を外れてからもすっ飛ばしていたとわかったので、考えないとダメだろうといいましたよ。

――佐々木さんは素直に「はい」といいましたか。

深浦 いや、「はい」をいうまでに間がありました(笑)。

杉本 何かいいたいことはあるでしょうね(笑)。

深浦 そうでしょうけど、何かを飲み込んでいました(笑)。