藤井七冠と永瀬九段は「一緒にお昼ご飯を食べたり…」練習将棋の和やかな雰囲気
――藤井聡太竜王・名人(七冠)が一門研究会に参加することもありますか。
杉本 いまはないですね。一門研究会と同じ日に、たまたま同じ場所で永瀬(拓矢九段)さんと藤井くんが練習将棋を指していることはあります。一緒にお昼ご飯を食べたり、休憩中に雑談することも何度かありました。いまは永瀬さんがずっと藤井にタイトル挑戦をしているので、年明けからは練習将棋を指しているところは見ていません。
――タイトルを争っているふたりが練習将棋を指すのは、手の内をお互いに明かすみたいでやりづらいですよね。
杉本 弟子たちも、ふたりのタイトル戦を勉強しながら「そういえば最近、永瀬先生が来ませんね」といっていますよ。弟子たちも本当はふたりの練習将棋を見たいんだけど、自分たちと一緒に研究会をするために集まっているわけではないので、盤面をのぞき込むのは失礼だろうと思って、遠慮しているようです。
観戦イベントに“足りないところ”
深浦 そういえば『師匠はつらいよ』の第1巻の最後に(第100回『“連載百回の感想戦”』)、藤井さんと永瀬さんの研究会の話が書いてありましたよね。
今、私は自分の将棋研究室のPC(AMD搭載・藤井竜王寄贈)を使い、このエッセーを書いている。
隣の部屋からは藤井竜王と永瀬拓矢王座の笑い声が聞こえてくる。そう、コロナの規制緩和で復活した彼らの研究会。その感想戦の真最中なのだ。
この空間で書くとエッセーが浄化される気さえする。そして私はいつものように話しかけるのだ。
「藤井君、永瀬君、感想戦止めてそろそろ昼ご飯にしない? 弁当が冷めるから」
「藤井さん、先に休憩にしますか?」
「あ、そうですね」
ちなみにこの2人が自分たちで弁当を買いに行くと人目を引きすぎる。なので、弁当の注文や配達は師匠の私の役目である。
ううむ、本当につら……いや楽しいぞ。充実した日々に感謝である。
杉本 あのふたりは感想戦が本当に楽しそうで、タイトル戦の映像を見ても研究会とまったく一緒です。もうかれこれ、8年ぐらいそんな光景を見ています。そういえば、日本将棋連盟のイベントでファンの方に見ていただいたことがありますよね。
――2023年12月に東京・旧将棋会館で行われた、イベントですね。東西の新将棋会館の建設費用を集めるため、クラウドファンディングの返礼品として観戦の機会が作られました。ふたりは私服で、普段通りに練習将棋を指す姿をファンの方に見ていただいたと聞いています。
当時は藤井八冠、つまり永瀬さんから藤井さんが王座を奪取した直後とあって、話題を呼びました。
杉本 あのイベントで1個足りないものがありますね。お昼ご飯を買いに行く私です。忠実に再現するなら、そこはやってほしかったかな(笑)。
撮影=杉山秀樹
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