師匠になるかもしれない弟子へのアドバイス

――そのうち弟子たちも師匠になるかもしれません。

深浦 九州出身の佐々木大地と北海道出身の齊藤優希には、すごく現実味があります。多分、地方の子を弟子に取るような感じになるでしょう。

――師匠になるかもしれない弟子たちにアドバイスはありますか?

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深浦 弟子には優しくして、ですかね。本人たちにはいってないですけど(笑)。例えば将棋を教えるにしても、あえて少し競った局面にして、自信を弟子側に持たせるとか。少し甘めにやったほうがいいです。

――佐々木七段の話を思うと(#1)、本当ですか?

深浦 反面教師ってことでお願いします。褒めて伸ばすほうがいい。

一同 (笑)。

 

――おふたりの話を聞いていると、人を見ながら関わり方を考えているのが伝わってきます。そのうち、お弟子さんたちも同じような悩みに直面するんじゃないでしょうか。

深浦 自分が奨励会員のときに見た、先輩棋士とは全然違いますよ。米長(邦雄永世棋聖)先生とか、大内(延介九段)先生とか、威風堂々とかっこよかった。それに憧れて棋士になりたい気持ちがありました。

 師匠になったら威張れるのかなと思っていたら、本当に気を使います。その子に会ってどうアドバイスするか、親御さんにどう連絡するか。メールの文面からじっくり考えますし。

藤井七冠は弟子を取るのか

――藤井聡太さんもいつか弟子を取るんですかね。

杉本 どうなんでしょう。話があっても、同郷の先輩に薦めるような気がしますけど。彼は一年中、タイトル戦を戦っていますし。

深浦 羽生(善治九段)さんも弟子はいませんし、タイミングが難しいような気がします。

杉本 何か弟子の失態があれば、師匠が連盟に呼び出されます。これは本当につらい。理想と現実は違うんだよなぁ。一緒に買い物に行っても、必ず弟子が自分から持ちますといってくれるわけじゃないし。

 

深浦 でも、気遣いが素晴らしい弟子ほど、なぜか奨励会じゃ苦労しますよね。

杉本 鋭いことをいいますね。確かに、そこに気を回す弟子はなぜか本番で勝てない。

深浦 気配りできないほうが強いは、昔からそうだったような気がします。

杉本 お茶を淹れるのがうまくなっちゃいけないといわれていました。関西対局だと、対局者のお茶は記録係が急須から淹れるんですよ

 入会して日が浅い奨励会員だと、まったく美味しくない。記録係の回数を重ねると自然とうまくなっていく。でも、記録係を長くやることは奨励会にずっといる意味なので、お茶を淹れるのがうまくなる前に抜けないとだめだということです。