〈あらすじ〉

 1950年、風光明媚なイタリアの港町ナポリに1人の女の子が誕生。ギリシャ神話に出てくる人魚の名であり、ナポリを意味する「パルテノぺ」と名付けられた。裕福な家庭で何不自由なく育てられたパルテノぺ(セレステ・ダッラ・ポルタ)は、誰をも虜にする美貌を持つ、魅力的な女性へと成長する。

 そして23歳の夏。パルテノぺは、兄のライモンド(ダニエレ・リエンツォ)、使用人の息子で幼馴染みのサンドリーノ(ダリオ・アイタ)とカプリ島にバカンスへ。そこで憧れの作家ジョン・チーヴァー(ゲイリー・オールドマン)と運命的な出会いを果たしたパルテノぺは、彼との会話によって自身の美しさがもたらす力を知り、人生の絶頂期を堪能する。しかし、対照的に孤独感を強めた兄の死によって、彼女を取り囲む世界も一変し……。

〈見どころ〉

 主演のセレステ・ダッラ・ポルタは、本作が映画デビューとなる期待の新人。一方、73歳のパルテノぺを演じるのはベテラン女優のステファニア・サンドレッリ。

イタリア映画界の巨匠が描く、愛と自由を追い求めた女性の生涯

『グレート・ビューティー/追憶のローマ』(13)で第86回アカデミー賞外国語映画賞を受賞したパオロ・ソレンティーノが初めて女性を主人公に据えた渾身作。若者からの絶大な支持で本国内で監督史上最大のヒットを記録。新境地にして真骨頂の呼び声も。

©2024 The Apartment Srl - Numero 10 Srl - Pathé Films - Piperfilm Srl @Glanni Fiorito 配給:ギャガ
  • 芝山幹郎(翻訳家)

    ★★★☆☆構図や色彩設計など、ヴィジュアル面の豪快な投げ技で観客の眼をさらう映画作家だが、好調なときは、グラウンドに持ち込んでからの関節技も巧みに繰り出す。ただ今回は、その技がいまひとつ決まらない。いつもならば濃密に感じられるスローペースが、単にタメを利かせすぎた印象を与える。

  • 斎藤綾子(作家)

    ★★☆☆☆つかの間の若さを思い返すだけか、美貌も才能も孤独も、よくここまで陳腐に冗長に描けたものだ。
    唯一パルテノペが大学で出会った恩師マロッタ教授の、美女パルテノペと奇怪な教授の息子への、無情な時の流れを映す演出は心に沁みたが。

  • 森直人(映画評論家)

    ★★★★☆バブリーなブランドCM感も漂う優雅で感傷的な女性一代記。チャラい色気と知的な風格、地中海の潮の香りと太陽の光に満ちたイタリア映画。いまこんな世界像を撮ってくれるのはソレンティーノ監督しかいない。オールドマンが演じる『泳ぐ人』の米国人作家ジョン・チーヴァーの登場なども愉快。

  • 洞口依子(女優)

    ★★★☆☆全編が香水の宣伝のように美しく甘美な映像。ソレンティーノ監督なのでロケーションは期待通り。ほぼ全場面に登場しているヒロインは、何を考え何を見ているのか理解に欠くが、映画で旅しながら覗き見してる気分。映画におけるイタリアの美女の概念はモニカ・ベルッチの時代からアップデートされた模様。

  • 今月のゲスト
    マライ・メントライン(著述家)

    ★★★★☆人間とその叡智を愛する宿命を持った天女のような女性が、最後に普通のおばあさんになってゆくまでの転変を描く巨匠作。さりげなく宗教の本質にまで突きを入れるナチュラル教養映画で、カルヴィーノやブッツァーティの小説を連想させる上質なマジックリアリズム感が刺さる。これはなかなかの逸品!

    Marei Mentlein/1983年、ドイツ生まれ。テレビプロデューサー、コメンテーターとして幅広く活動。最新著書は『日本語再定義』。

  • 最高!今すぐ劇場へ!★★★★★
  • おすすめできます♪★★★★☆
  • 見て損はない。★★★☆☆
  • 私にはハマりませんでした。★★☆☆☆
  • うーん……。★☆☆☆☆
ゲイリー・オールドマン扮する老作家との邂逅によって、パルテノぺは自分の肉体美を使った遊びに目覚めてしまう。神話の人魚が船乗りたちを自由気ままに誘惑したように。
©2024 The Apartment Srl - Numero 10 Srl - Pathé Films - Piperfilm Srl @Glanni Fiorito 配給:ギャガ
INFORMATIONアイコン

『パルテノぺ ナポリの宝石』
監督・脚本:パオロ・ソレンティーノ
2024年/伊、仏/原題:PARTHENOPE/137分
8月22日(金)~
​新宿ピカデリー、Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次ロードショー
https://gaga.ne.jp/parthenope/