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ベスト8に入ることが目に見える一番の結果

 大会前に、吉田にこんなことを聞いていていた。

――共に長く戦ってきた世代への思いがあるのでは。おそらく彼らと戦うのはロシアが最後になる。

「どんな代表でも、その世代の最後はありますよね。(川島)永嗣くんやハセさん(長谷部)は出ていなかったけど、僕ら北京五輪を戦った世代が一緒に戦うのは最後になる。ずっと長くやってきた選手たちで、ピッチ内外で付き合いがある選手も多い。それぞれ結婚式に出たり、お互いの家族のことも理解したりしている。思い入れは、やっぱりありますよね。僕は次のロンドン五輪にも出ていて、その世代では一番年上だったけど、この世代は僕と(香川)真司が一番下で、先輩たちを見て、ついてきた。だから、やっぱりこの世代が戦えるロシアW杯で、何かを成し遂げたいと思う。それは、ベスト8に入ることが、一番目に見える結果なんじゃないかと考えているんです」

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©JMPA

 過去の代表が成し遂げられなかった、ベスト16の壁を突破すること。自分たちの力で、初めてそこを超えられた時、日本サッカーが新時代を迎え、さらに4年前のブラジルでの惨敗を乗り越え、そしてこの世代が極みに到達する瞬間を迎えられる。

 だからこそ、吉田にとってベスト8進出は秘めたる目標であった。

 あの涙は、この仲間たちとの戦いが終わったことを暗示するものであり、8強進出が叶わなかった悔しさを表すものでもあった。

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ミスをしたGK川島への気づかい

 吉田は、律儀な男である。

 先輩、後輩問わず、誰とでも分け隔てなく付き合い、距離を詰めるのが上手い。その大半は冗談を言い合ったりする時間なのかもしれないが、ふと真面目な話になると骨太な意見を述べることができる。

 硬軟織り交ぜた対話。そこに常に温度が通っているところに、律儀さがあふれる。

 長谷部には、よく誕生日プレゼントを送っていたという。1月生まれのキャプテンに対して、次期は遅れることはあったが3月生まれの川島と合わせて春に届けることもあった。長谷部が負傷で不在となった昨年3月。W杯最終予選のアウェイUAE戦で、吉田が初めてキャプテンマークを巻き、チームの勝利に貢献した。「代表のキャプテンは重たい。ハセさんは、毎試合これをやっているんだから、すごいですよね」。疲労感とともにこぼれてきたリスペクトの言葉は、今も耳に残る。

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 川島とは、名古屋グランパス時代の先輩・後輩にあたる。厳密に言えば川島が在籍していた時代、吉田はまだ名古屋のユースチーム所属だったが、先輩の背中はいつも見ていた。今では愛知で代表戦が行われる際は、二人が大好きな先輩、楢崎正剛と一緒に写真に収まるのが恒例。そして今回のロシアW杯期間中、川島がミスで失点を喫しながらも次の試合で好セーブを見せチームを支えると、吉田は自身のSNSで真っ先に彼を讃え、そして感謝した。