文春オンライン

次の主将か吉田麻也「W杯直後の涙、本当の理由」

2018/07/13
note

先輩なのに“タメ語”の「岡ちゃん」

 同じイングランド・プレミアリーグでプレーする岡崎とは、今では時間が合えば普段からロンドンなどで親交を深める。共通の知り合いも交えて食事に出かけ、サッカーの話や家族の話などに花を咲かせる。先輩でありながら、岡崎に対しては唯一「岡ちゃん!」と親しみを込めて“タメ語”で呼ぶ。そんな吉田を、岡崎は可愛い後輩を見つめるようで、そこに二人の信頼関係が存在する。

 何より、岡崎がレスターの一員として日本人で初めてプレミア優勝を経験した時には、「これが、どれだけの偉業なのか。もちろん同じ舞台でプレーする僕が、岡ちゃんがやってのけたことの凄さを一番理解し、尊敬している」と吉田は話していた。

©JMPA

 この世代では唯一の同級生である香川。「真司は普段から何を考えているのかよくわからない(笑)」と話していたことがあったが、今大会で二人が成し遂げたことがあった。

ADVERTISEMENT

 それは、W杯初勝利。二人を除く5選手は、すでに2010年南アフリカ大会で勝利を経験していた。その直後に代表に定着した彼らは、初めてのW杯となった2014年大会で惨敗を喫した。そう、8年近くも代表でプレーしながら、吉田と香川だけが大舞台での勝利の味を知らなかった。

 初戦のコロンビア戦で勝った数日後。吉田が誰に聞かれることなく自ら語った言葉が印象に残っている。

「真司がゴールを取ってくれたことは、本当に良かったと思っています。代表に入って7年以上経って、初めてのW杯勝利。長かったなと本当思いますけど、すごくうれしかったです」

©JMPA

 長友とは、実は「ピッチ上では、よく意見を言い合うこともあるんです」と話していたことがあった。イングランドでプレーする吉田と、イタリアで長くプレーした長友。細かな守備戦術で互いに考えが異なり、何度も意見をぶつけ合うことも。DFラインをできるだけ高く上げて布陣全体をコンパクトにしたい吉田と、ラインを低目にしながらもしっかり構えて相手と対峙したい長友。そのすり合わせは、実は数年間続いていったという。

 ただ、それもプロ同士としては当たり前の主張であり行動だった。ピッチを離れれば、吉田がオフの際にミラノを訪れると、レストラン予約から支払いまで、すべて長友が済ませてあったという。

 懐の深い長友の先輩力と、誰にでも可愛がられる吉田の後輩力が合わさったエピソードだ。