逆回転機能から発想したSF映画、『タイムリターン』と『TURN POINT10:40』

明子 同じく中3で『タイムリターン』(1978)を撮って、高1で『TURN POINT 10:40』(1979)を撮りますが、この2本は『Single8』(2023)の劇中映画『タイムリバース』の元になった作品ですね。

和哉 8ミリカメラに逆回転撮影できる機能があることから、宇宙人が地球の時間を逆転させる話を考えて作ったのが『タイムリターン』で、ほぼ同じストーリーで、1年後にリメイクしたのが『TURN POINT 10:40』です。『タイムリターン』のオープニングは、「あなたの心はあなたの体を離れて、不思議な15分間を体験します」みたいなナレーションで『ウルトラQ』の音楽が流れるという、『ウルトラQ』の1本のような体裁だった。宇宙から来た円盤が地球の時間を逆転させて、人間の進化をやり直させようとする話。アイディアは悪くなかったと思うけど、正直出来がメチャメチャ悪かったのね。説明ゼリフがいっぱいで、しかも主人公は着陸した円盤と台詞だけでやり取りするので、非常に退屈。主人公が円盤の中に入ると特撮が大変だから。でも、実景を映写して手前にミニチュアの円盤を置いたスクリーン・プロセスとか、いろいろ合成とかはやったんですよ。『CLAWS』の次の年だから大きな進歩だとは思うけど。

 高校に入ると映画研究部があったので入部するんですが、1学年上に手塚眞さん、同期に利重剛(注1)と後にプロになった人も多くて、本気で映画を作る人たちが集まっていたんです。入部してから文化祭までは、手塚さんの『FANTASTIC★PARTY』(1978)に参加して発明家のゴローという役をやった。文化祭映画が終わると1年生だけで映画を作るのが恒例で、全員が脚本を書いて投票で選ぶ、という決まりだった。僕は『タイムリターン』を書き直した脚本を出して、それが選ばれて撮ったというわけ。

ADVERTISEMENT

小中明子氏 撮影:藍河兼一

明子 『Single8』で描かれているように、『スター・ウォーズ』(1977)を見て宇宙船を撮りたいと思ったんですか?

和哉 『スター・ウォーズ』を見て、とにかくあんなでかい宇宙船を撮りたいと思って、その一念で作った。宇宙船が撮れればいいので、『タイムリターン』を書き直せばいいやと。もちろん、『タイムリターン』が上手く出来なかったので、もう一度作り直したいという思いもあったけど。