少しずつ歩む修復の道
A子さんはようやく素直な気持ちを話してくれたので、A子さんから依頼を受けて、謝罪をしたいこと、修復をしたいことを書面で伝えました。
すると、夫の弁護士から、調停の申し立ては見合わせる、しばらく距離を取ってやりとりをしていきたいという連絡が来ました。
別居状態は続いていますが、A子さんは少しずつ息子と会うようになりました。タワマンに遊びに来ることもあります。学校の話をA子さんから聞くと怒ってしまいそうになるので、息子が話すことに相槌を打つだけにしています。
夫も含めてみんなで旅行に行こうといった話も出ているので、A子さん親子は少しずつ修復の道を歩んでいるといえるでしょう。
中受失敗から教育虐待
A子さんのケースのように、受験失敗を契機にした教育虐待のケースは多々あります。
特に多いのは中学受験です。中学受験は親の受験と言われているように親の役割の比重が大きい半面、受験結果についても親が子ども以上に影響を受けるケースを多々見てきました。
無事に志望校に合格すればよいのですが、大変なのは不合格になった時です。
子ども本人よりも親が荒れに荒れて、「クラスメートが受験の結果を聞いてきたのはひどい」とか「塾に騙された」「笑われた」など、身の回りのあらゆる人を攻撃するようになります。果ては卒業式や進路調査といった普通の行事や手続きにも後ろ向きになり、不本意な結果に終わった子どもの傷口にさらに塩を塗る……という結果になってしまいます。
子どもを遠くに追いやろうとすることも
特に極端なケースとして見られるのが、子どもを遠くに追いやろうとする行為です。「受験に失敗したことが恥ずかしい」という気持ちが高じて「この子が家にいるのが恥ずかしい」と感じるようになり、受かった中で一番遠い全寮制の学校に入れる、祖父母の家に預ける、海外留学をさせるといった事例が実際にあります。その結果、夫婦で意見が食い違ってトラブルになり、片方が子どもを連れて別居する……という流れです。