だが、不動産業界側はこの要請に冷淡なようだ。

記者会見で、不動産協会の吉田淳一理事長は「合理的な規制なのか疑わしい。自由経済の中で、現状では協会としてやる意味は感じていない」と述べ、千代田区に対して正式な説明を求めた。

同協会の野村専務理事も「実需層を中心に今の市場が生まれているのではないか。区がどのような事実を前提にしているのか理解に至っていない」と反論した。

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法的にも地方自治体が民間の不動産取引を直接規制するのは難しい。条例や法律で縛ることは困難で、現実的には「要請」レベルしか打ち出せないという限界もある。今回もあくまで自治体からの要請であり、条例のような法的な拘束力はない。

転売益を狙う「転売ヤー」たち

都心の新築マンション市場では、実需ではない投資目的の購入が急増している。特に同一名義で複数戸をまとめて購入し、転売益を狙うケースが目立つ。

都心6区(特に千代田・港・中央区の都心3区)では価格上昇が続いているはその立地とブランド力からマンション投資の人気が高く、投機マネーが集中しやすい。こうした投機的購入は、転売時にプレミア価格を上乗せし、周辺相場全体を押し上げる。結果として、一般の購入希望者が手を出せない価格帯にまで跳ね上がり続けている。

さらに問題なのは、売益狙いの買い手は実際に住まず、空き家状態にすることが多いことだ。空き家が増えると、防犯面のリスクが高まる。

また、分譲マンションに必要なマンション理事会も定足数を満たず、理事会をスタートすることもままならない恐れすらある。修繕積立金などの滞納も多いと言われている。

入居者の入れ替わりが激しくなれば、地域コミュニティの活動や自治体が提供する住民サービスにも支障が出かねない。

これは、コンサートチケットや人気商品を買い占めて転売する「転売ヤー」現象と同じ構造であり、放置すればマンション市場が「転売ヤー」だらけになり社会問題化するのは必至だ。