また、シンガポールでは外国人は1軒目の購入から追加印紙税(60%)が課され、短期転売にも課税している。また、香港は24カ月以内の転売に高率の特別印紙税20%を課しており、転売目的を抑え込む実質的な制裁金となっている。
いずれも自国民とは差別化を図っており、外国人によるマンション取得へのハードルを大きく上げている。
これらの国や地域は「居住の安定」を政策目的に掲げており、国籍を問わず投機的な買い占めを抑制している。
日本はこういった不動産に関する外国人投資の規制をしていない。
「マンションのメルカリ現象」を止めるには
千代田区の「5年間転売禁止」や「同一名義での複数購入禁止」の要請は、法的拘束力こそないが、「マンションのメルカリ現象」を止めるには有効であるはずだ。
そのうちどれくらいが中国人や中国系組織によるものかはわからないが、中国では日本の不動産専門の業者が数多くあり、かなりを占めていることが推察される。
現状の日本においては無茶な外国人投資を抑制する数少ない実効性ある抑止策だろう。投機マネーの流入を止めることはできないとしても、短期転売目的の購入を減らす効果は期待できる。
特に中国人を含む海外投資家の一部は、短期間での資産回転を前提としているため、保有期間条件は心理的な抑止力になる。
ただし、抜け道は存在する。たとえば複数名義を使う、法人を経由するなどすれば規制の回避は可能である。
それでも、何の規制もない現状よりは、明確な「線引き」を示すことで市場全体にメッセージを送り、規制に向けて国を動かす原動力となり、意義は大きい。
罰則のない行政指導では効かない
今後については、大きく分けて3つの課題がある。
1つは、国レベル・都道府県レベルでの制度の法的強化だ。現状は行政指導にとどまり、従わない場合に罰則はない。これでは実効性が薄くなってしまう。国・都道府県レベルでの住宅市場安定化政策が不可欠だ。
2つめは、全国的な規制の導入だ。外国人購入に対する追加課税や保有期間条件など、海外で一般的な措置を日本でも検討すべきである。金融資産と紐付けしたマイナンバーを外国人居住者に普及させることも効果的だろう。