3つめは、実態調査と情報公開である。千代田区が実施したような居住実態調査を継続的に行い、空き家率や投資目的購入の割合を可視化して共有する必要がある。可能であれば、そのうち外国人投資がどれくらいを占めるかも割り出したい。それに加えて、「小中華圏」化の兆候についてもモニタリングし、地域社会の分断リスクを事前に把握するべきだろう。

東京が投資家の「遊び場」になっていいのか

都心のマンション市場は今、中国人をはじめとする海外投資家の短期的な利益追求によって大きく歪められている。価格は高騰し、地域コミュニティは希薄化し、普通の住民は締め出されつつある。

千代田区は「町会」が多数存在しており、地域活動や神田祭などのイベントを通して都心でありながら昔ながらのコミュニティを形成している地域だ。そんな中に、中国系コミュニティが自前の情報網と経済圏を持つ「小中華圏」が形成されつつあるのである。

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この状況を是正するためには、千代田区のような試みを全国的に広げ、法的裏づけのある政策を立ち上げることが急務である。また、不動産業者側にもある程度の歩み寄りが必要だろう。

今の日本は、世界の不動産投機マネーにとって「最後の無防備市場」になりつつある。このまま何もしなければ、都心のマンション市場は完全に投資家の「遊び場」と化し、地域で根を張っていこうという日本人を遠ざけてしまいかねない。

根本的には政府レベル、国レベルでの監視と規制が必要だが、まずは千代田区の挑戦を支援することから始めるべきである。

白川 司(しらかわ・つかさ)
評論家・千代田区議会議員
国際政治からアイドル論まで幅広いフィールドで活躍。『月刊WiLL』にて「Non-Fake News」を連載、YouTubeチャンネル「デイリーWiLL」のレギュラーコメンテーター。メルマガ「マスコミに騙されないための国際政治入門」が好評。著書に『14歳からのアイドル論』(青林堂)、『日本学術会議の研究』『議論の掟』(ワック)ほか。
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