そもそも、野生のヒグマは雑食ではあるが、肉食の割合は意外に少ないとされる。のぼりべつクマ牧場のサイトによれば「全体の約7~8割」、門崎允昭著『ヒグマ大全』(北海道新聞社)によると9割ほどは、木の実や野草などを食べているという。
クマがわざわざ人を襲ってその肉まで食べるのは、一応は特殊なケースと考えられる、ということだ。
「クマをペットにした女性」の最期
しかし、クマが何らかの理由で肉食を覚え、凶暴化し、人間を襲撃することもある。
山中で自然に死んだシカの死体を食べ肉食化することもあるが、「人間による餌付け」もまた、クマを肉食化させるきっかけになりうる。
また、餌付けによってクマが人間を恐れなくなることも、襲撃のリスクを高める。これまで人間を恐れて近寄らなかったクマが、急に攻撃的になる可能性もあるからだ。
実際、アメリカ・コロラド州南西部のユーレイでは、クマに餌付けをしていた女性が殺される事件が2009年に発生している。AP通信によると、この女性は74歳で、少なくとも10年間にわたり、付近に棲息するクマ(アメリカクロクマ)に餌付けする目的で、家の外に食べ物を置いていた。
「彼女はクマを家族のように扱い、まるでペットのように餌を与えていました」という証言もある。女性の家のまわりには最大で9頭のクマが集まっていたという。
だが、餌付けにより凶暴化したクマは、ある日突然、女性に襲いかかった。女性の自宅はフェンスに囲まれていたが、クマはフェンスごしに女性を襲い、遺体の一部を食害していた。
6歳の男の子は「ほとんど食べられてしまった」
また、直接餌付けをしていなくても、クマが人間の食べ物を入手し、肉食化するケースがある。
特に、ごみを長期間屋外に放置していたり、不法投棄していた場合、クマがそれを食べて肉食化・凶暴化することがあるという。
アメリカ・アラスカ州の小さな漁村キングコーブでは、街のごみ捨て場を漁っていたクマが凶暴化し、6歳の少年が殺害される事件が発生している。