多方面で活動することへの本音

 そうかと思えば、ドラマ『民王R』(テレビ朝日、2024年)には、総理大臣の秘書というまったく自分とはかけ離れた役で出演した。これ以前より演技の仕事について《TVは「あのちゃん」ばっかりを求められるけど、お芝居は「今のはあのちゃんになっちゃってるから、役になりきって」と言われるんで、それは面白いなって思いました。別の人になれるのはお芝居ならでは。すごい解放させてくれるし、自分じゃないものに出会ってる感じがして楽しいです》と話していただけに(『Quick Japan』vol.160、2022年5月)、挑戦しがいがあったようだ。

 彼女のなかでは昔から、自分はいくつもの面でできていて、そのどれもが自分だという意識があるらしい。それは活動範囲が広がるにしたがい強くなっているようだ。これについて彼女は次のような独特のたとえで説明している。

《自分の考えはぶれないけど、自分自身を組み立てるものがどんどん増えていったり、パーツが外れたりするっていう感覚はあって。(中略)昔よりはっきり輪郭が見えてるところが多くなった。丸い卵があったとして、殻が何分割にも分かれているイメージというか。その殻が剥がれたりくっついたりして、すべての殻の輪郭がはっきりして、1個の卵の輪郭もより強く、割れづらくなったような感覚で。でもまだ、自分自身を見失いそうになって、しんどくなることは最近でもあるから、これからも向き合っていく部分かなと思います》(『ロッキング・オン・ジャパン』2023年10月号)

あの写真集『あの在処』(2024年、小学館)

「正直、社会では生きていけないし、そこからは逃げてるけど…」

 彼女がブレずに一貫しているのは、やはり音楽に対する姿勢だ。最近のインタビューでも、《正直、社会では生きていけないし、そこからは逃げてるけど。自分が決めた“音楽で生きる”っていうところからは逃げない。悔しさは遠回りしてでも絶対に見返したいし、自分のやってきたことを全部正解にさせるという思いで。簡単に成功できる近道や欲に揺らいでも、そっちに行かずにやってきたからこそ必然的に強くなっちゃいました》と語っている(『装苑』2025年7月号)。そこだけはブレずにやって来たからこそ、自分を見失いそうになっても元に戻ってこられたし、人々から共感も得られたのだろう。

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ソロアーティストとして日本武道館公演を開催

 冒頭で引用した発言にもあったとおり、武道館でのコンサートもブレずに来たから実現できた。それを終えたいま、アーティストとして次に目指すステージを彼女はどこに定めているのだろうか。


「愛してる、なんてね。」作詞:あの、作曲:尾崎世界観(クリープハイプ)

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