裕福な家で育ったおとなしい少女がなぜ?

1.    ももの肉片など大小の肉片が別々のタンクから発見されたが、全て鋭利な刃物で削いだものだった。

 

2.    村道から約50メートル東の農家の麦畑からは血の付いたブラウスと、やはり削り取られた肉片2つが発見された。状況から、犯人は麦畑で五女をてぬぐいで絞殺した後、鋭利な刃物で両足を切断。足の肉を削り取って、それ以外をカマスに詰め込み、タンクまで直線で引きずり込んだと推定される。

 

3.    捜査本部は、中学校で行われた運動会予行演習を見物した青年男女約50人から事情聴取。五女の帰宅状況を調べたが、土地鑑のある変態性不良の仕業とみている。陸稲畑の荒らされ方から村道から畑へ引きずり込んだ跡が歴然としており、帰宅途中の五女に後ろから抱きついて暴行を迫り、絞殺後、犯行をくらますためバラバラにしたとみられる。

 

4.    五女の家は村でもかつて豪農で知られ、現在も2町(約2万平方メートル)余の田畑を耕して、内情は裕福だと村民は言っている。父親は現職の村会議員。家族は父母と娘ばかり5人で、被害者は末っ子。村の中学校を卒業後、坂戸町の女子高に進み、昨年卒業した。家で織物の手伝いなどをしていたという。性格はおとなしく、カメラに熱中。村の青年団教養部の委員を務め、村の若者のリーダー格だった。付近の人の話だと、男関係は全くないといわれ、家人は殺されるような心当たりはないと涙にくれている。

 

5.    当夜の足取りは午後7時半ごろ自宅を出て、9時ごろ予行演習を終わり、青年団支部長(23)らと中学校を出て、通り合わせた青年部長(23)が「自転車の後部に乗せてやろう」と声をかけたが、「太っているのでパンクする」と言って一人で帰った。

 村の若い女性らしい姿だが、そんな彼女がどうして殺され、バラバラにされて肥だめに捨てられなければならなかったのか――。記事には現場の写真と手書きの見取り図が添えられている。

現場付近の見取り図(埼玉)

凶行の手口が極めて残虐

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 初報で一歩先を行った毎日は9月7日付朝刊で早くも「性格異常の容疑者浮かぶ」と見出しを立てた。「捜査当局では、凶行の手口が極めて残虐なことから、痴漢、怨恨関係のほか、覚醒剤中毒患者に重点を置き、既に凶暴性があり、異常性欲者である某(特に名を秘す)を捜査している」とした。当時、国内では覚醒剤の一種「ヒロポン」の蔓延が社会問題になっていた。