藤井七冠に渡した誕生日プレゼントは…

「藤井聡太さんにプレゼントはしないのですか? ケーキをこちらで用意しましょうか?」

 そんな周囲の重圧に負けて、藤井七冠が棋士になってからの数年間はプレゼントを渡し続けた。

 15歳、ノートやペンなどの筆記用具。翌年以降は、新幹線型のネクタイピン、カツオの生節、低周波健康器具、師匠が勝利したテレビ棋戦の棋譜……カツオの生節が異彩を放っているが、これは高知県でお土産を買ったから。本節ではないのでそのまま食べられるし持ち運びにも便利。そしてカツオにはDHAなど脳の働きに良い成分が含まれている。

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「藤井君、これで更に賢くなってくれ。ハハハ」

 そう言いながら渡した。藤井七冠は笑いながら受け取ったが、本当に食べたかは知らない。

©︎文藝春秋

棋士にとっての「最高のごほうび」

 現代は、福利厚生の制度に「誕生日休暇」を取り入れる企業が増えたとか。たしかに誕生日に堂々と休めるのは、社員のモチベーションアップに繋がりそうだ。

 なお棋士の公式戦はリーグ戦、タイトル戦、一斉対局以外ならある程度の融通が利き、誕生日を意識的に休みにすることは可能だ。

 年齢などただの記号に過ぎない。こう言ったのは俳優の夏木マリさんだ。全くその通りで、年齢に振り回されて自分を縛るのは勿体ない。誕生日だってそれ自体は365日の中のわずか1日に過ぎない。

 だがこうも思うのだ。誕生日は、それを迎えた人だけが自分の半生を振り返れる日。そのきっかけを与えられたことを喜ぶ日ではないかと。

 誕生日の対局は棋士でいられる証明。自分への最高のごほうびとも言える。

 ともあれ、今年も無事に誕生日を迎えられたことは素直に喜びたい。

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