将棋界を牽引する若き天才、藤井聡太七冠。その師匠である杉本昌隆八段が、“最強すぎる弟子”のエピソードをはじめ、楽しくトホホな日常を「週刊文春」で綴った大人気エッセイ集の第2弾『師匠はつらいよ2 藤井聡太とライバルたち』(文藝春秋)。
その中の一篇「師匠にしたいプロ棋士?」(2023年9月7日号)を転載する。
(段位・肩書などは、誌面掲載時のものです)
◆◆◆
師匠にしたいのは誰?
最近、ネットの将棋記事が頻繁に目に入ってくる。一度検索すると関連した記事が優先的に表示されるからだ。普段なら見過ごすようなニュースも、図らずも知ってしまうことがある。
【全国の女性が選ぶ】師匠にしたいと思う「現役プロ棋士」ランキング!
こんな記事を目にした。
上司ではなく、師匠なのが記事の急所。この「全国の女性」なる方々は師弟制度をご存じなのか? そして何人に聞いたのか?(後に150人と判明)色々疑問点は多いが、きっと気楽に読むべき記事なのだろう。
私も師匠と呼ばれる身、反射的にその記事をクリックしたのだ。
まず2位は……藤井聡太七冠! なるほど、これは人気投票も兼ねているのか。彼はキッチリした性格だから師匠能力も高いはずだが、さすがに若過ぎるのではないかな。
となると、気になるのはやはり第1位。藤井七冠を上回る投票を集めた師匠のイメージの棋士と言えば、も、もしかして……。
私は高まる気持ちを抑えつつ、ページをスクロールした。



