2000年前後に、当時を代表するヒロイン像を作り上げていた彼女が今、“嫌われ義母”を演じヒロインを引き立てる役に徹しているのは、なんとも感慨深いものです。
朝ドラ『ひまわり』(1996年/NHK)や『やまとなでしこ』(2000年/フジテレビ系)、『家政婦のミタ』(2011年/日本テレビ系)などの代表作を持つ松嶋菜々子さん(51歳)。
連続テレビ小説『あんぱん』(NHK)はいよいよ最終回を迎えました。『アンパンマン』を生み出したやなせたかしと妻・暢の夫婦をモデルとした作品で、幼少期の2人の出会いから夫婦となって荒波を乗り越えていく姿までを描く物語。ヒロインののぶを今田美桜さん、夫の嵩を北村匠海さん、のぶの母を江口のりこさん、そして嵩の母を松嶋菜々子さんが演じています。
「伯父さんのところに帰りなさい」
松嶋さん演じるヒロインの義母・登美子はかなりアクの強い人物。物語の要所要所で、大きなインパクトを残したキャラクターです。
文化的な教養がありインテリジェンスに富み、立ち居振る舞いはエレガントながら勝ち気で奔放な性格の登美子。劇中で三度も結婚を経験しており、一人目の夫との子である嵩が幼い頃から大人になってまでも、とにかく翻弄し続ける役どころ。
例えば嵩の少年期を描いていた第10話。登美子は二人目の夫と結婚したため嵩を伯父の家に押し付けており、要するに捨てていたのですが、嵩が離れて暮らしていた登美子に会いにいくシーンがありました。「母さん、ずっと会いたかった……!」とすがられても、「嵩、いい? ここに来ちゃもういけないの。伯父さんのところに帰りなさい」と、無情に突き放す毒親っぷりで視聴者をドン引きさせたのです。
さらに、それから8年が経過して嵩が青年になった第14話では、二人目の夫と離婚したため、「嵩? 久しぶり。元気だった?」と涼しい顔で再登場。
第15話では、8年間も音沙汰がなかった登美子に対し、のぶが「今ごろ何しに戻ってきたがで! これ以上、嵩を傷つけるがはやめちゃってください」と告げます。愛情深い性格ゆえに登美子に憤り、大人相手にも真っ向からぶつかっていける、成長したのぶの芯の強さが表現されていました。登美子によって、ヒロインの魅力が抜群に引き立ったとも言えるのです。




