少年時代に友人をいじめていた20歳の青年が、その友人やガールフレンドら7人に暴行を加えられ亡き者にされた「ボビー・ケント殺害事件」。壮絶な復讐を果たした加害者たちのその後とは? 1993年(平成5年)の事件の結末を、我が子を無惨に殺された親、学生時代ひどいイジメに遭った者などが仕返しを果たした国内外の事件を取り上げた新刊『世界で起きた戦慄の復讐劇35』(鉄人社)から一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)

写真はイメージ ©getty

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加速する「いじめっ子」殺害計画

 企みは進められ、リサからアリ、アリから当時彼女が交際していたドナルド・セメネック(同18歳)と、彼の女性友達のヘザー・スワラーズ(同18歳)へと話が広がる。そして1993年7月13日、リサから指示を受けたアリがボビーに「私とセックスできるかもよ」と電話をかけ、郊外の運河沿いにある造成地に誘い出した。

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 ボビーがアリと性行為に及んでいる最中、リサが持参した母親所有の銃ベレッタ950Bで射殺する心づもりだった。が、いざ本番になると実行に踏み切る勇気が出ず、計画は失敗に終わる。

 それでもリサはあきらめず、今度はアリの友人から紹介されたデレク・カウフマン(同20歳)を仲間に引き入れる。彼は単なる車上荒らしだったが、自分では「プロの殺し屋」を名乗っていた。さらにリサの従姉妹のデレク・ズヴィルコ(同19歳)が計画に参加し、翌14日の夜、マーティ、リサ、アリ、ドナルド、ヘザー、カウフマン、ズヴィルコの7人がマーティ宅に集まる。

 ここでマーティがボビーに電話をかける。

「これからアリのマスタングと俺が母親から借りたトパーズを使って自動車レースをするから来ないか? アリは昨日のセックスがすごく良かったみたいで、もう一度、きみとヤりたいと言ってるぜ」

 ボビーが快諾したことで、7人は2本のダイバーズナイフ、水道管用のパイプ、野球のバットを持参、23時半ごろ、ボビーを自宅から連れ出し2台の車に分乗して、大音量で音楽を流しながら昨日と同じ造成地へ向かう。計画に従って、2人きりになりたいと人気のない沼地にボビーを誘い出すアリ。ボビーの頭には彼女とのセックスしかなかった。

 完全に油断しているところを、まずは背後からドナルドがナイフで首を刺す。予想外の事態に慌てマーティに助けを求めるボビー。しかし、マーティは助けるどころか、ボビーの腹部にナイフを突き立てる。ここで、ようやく皆が自分を殺そうとしていることに気づいたボビーは「俺が悪かった。もういじめないから許してくれ。頼む!」と命乞いをしたが、聞く耳を持たないマーティはさらに滅多刺し。

写真はイメージ ©getty

 瀕死の状態で逃げる彼をマーティが追いかけ喉を刺し、倒れたところをカウフマンが顔面にバットを何度も振り下ろす。こうして虫の息となったボビーを男たち4人が引きずり運河の岸辺に遺棄。そこはワニが棲息する場所で、餌として遺体を食べるだろうと考えたのだ。