なんでも、奈良の人たちは困っているらしい。それはもちろんへずまりゅうさんが市議になってうんたらかんたら、などという話ではない。
奈良は、言うまでもなく京都と並び立つ古都のひとつだ。奈良盆地には多くの神社仏閣が集まり、国内外から観光客がやってくる。いつだったか、近鉄奈良駅に行ったら修学旅行生で溢れていて、まっすぐ歩くのにも難儀したものだ。
ところが、それだけの観光都市でありながら、宿泊する人がどうにも少ないのだとか。というのも、奈良は京都や大阪から近すぎるからだ。どちらに行くにも、特急などを使わずとも1時間ほど。JRに私鉄と、手段も豊富だ。だから、奈良は京都や大阪の観光の“ついで”のようなポジションに落ち着いてしまう。奈良は、悲哀を抱く観光都市なのだ。
地図を眺めていると“気になる駅”が…
で、ここで問題なのは、1時間で結ばれる京都と奈良の間である。
大阪と奈良の間には、生駒山地が横たわる。てっぺんには山上遊園地があって、信貴生駒スカイラインには大阪平野を一望できる展望台も用意されている。大阪や奈良の人にはおなじみの山といっていい。
では、京都と奈良の間には何があるのだろうか。
そう思って地図を眺めていたら、気になる駅が見つかった。木津駅だ。
ナゾの途中駅「木津」には何がある?
京都から奈良方面に向かうJR奈良線が北から南へと駆け抜け、東に向かっては関西本線(大和路線)が伸びる。笠置山地を抜けて最後は名古屋に達する長大路線だ。
反対に、西に向かって大阪市内を目指すのは学研都市線。生駒山地の北側を走り、ターミナル・京橋へ。
これら3路線が北から東から西から、木津駅で合流してまっすぐ南下、奈良盆地に入って奈良駅へとたどり着く。つまり木津駅は、紛うことなき京都と奈良の間におけるいちばんの要衝のターミナルなのだ。
その場所は京都府の一番南、京都府木津川市に位置する。路線図を見ると、奈良線においてはほとんど奈良の目前といっていい場所にある。
が、意外に京都府というのは南にも細長いようで、木津駅を過ぎてからもしばらくは京都府内。奈良県内に入るのは、奈良駅を前にしてやっと、といったところだ。
そして京都からやってきた奈良線は、木津駅に到着する直前で木津川を渡っている。東側の笠置山地から流れてきた木津川はその後奈良線に並行して北流、宇治川や桂川と合流して淀川と名を変えて、大阪のど真ん中を経て流れ出る。まさに関西を代表する大河だ。
つまり木津駅は3つの鉄道路線が交わり、加えて大河がすぐ近くを流れるという要衝中の要衝なのだ。
となれば、きっと木津駅も相当なターミナルオーラを放っているに違いない……。
