――ご両親はともに公務員だそうですね。

テスタ どちらかというと堅い家庭で、妹も大学院を出て公務員をやっているんです。彼女は子どもの頃から真面目に勉強していたし、ちゃんと宿題もやっていた。一方、僕は勉強嫌いで、宿題なんかもやらなかったから、子どもながらに「自分は両親や妹とは違うな」「自分だけ勉強できないな」って劣等感がありましたね。なので、サラリーマンには向かないんだろうなって。

  小5のときに、親が満員電車に揺られて通勤するのを見て、「自分には絶対に無理だな」とはっきり思ったのを覚えています。そこで「自分は違う道で生きていくしかない」って決意しました。

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――その決意は中学生、高校生になっても揺らぐことなく?

テスタ 揺らがなかったですね。僕は高校を卒業してすぐにひとりぐらしを始めてニートのような感じだったんですけど、サラリーマンになる気がないのに親にお金を出してもらって大学に進学するのもおかしな話だよなって思っていましたから。

「親からは顔を合わすたびに『ちゃんと就職しなさいよ』って…」

――ご両親や学校の先生から「進学するか、就職しなさい」とは言われませんでしたか?

テスタ そこはもう、ただただ言うことを聞かなかっただけで。昔からそんなに言うことを聞くタイプじゃなかったですし、言うことを聞くような子だったら、ちゃんと勉強や宿題をやっていたはずなんで。

  高校を卒業してからも、親からは顔を合わすたびに「ちゃんと就職しなさいよ」って言われてましたけど、ひとりぐらしを始めていたから顔を合わすのも2~3か月に1回とかでしたから。

――とはいえ、高卒ニートのひとりぐらしって、大変じゃないですか?

©︎文藝春秋

テスタ めちゃくちゃ大変でした(笑)。でも、好き勝手やりたいんだったら実家にいてはダメだろうと思ったので、家を出ました。家賃5万のワンルームを借りて、初期費用が家賃3か月分、15万くらいかかって。

  それを自分で払ったので、貯めていたお金はすっからかん。実家から14型のテレビだけ持って行かせてもらって、100均で洗濯板と洗濯のり、ほうきとちりとりを買ってスタートしました。

――洗濯機もなかったということですか?

テスタ 洗濯機を買えるようになるまで半年ぐらいかかりましたね。最初はカーテンもなかったですし。親は「どうせお金がなくなって、泣きついて帰ってくるだろう」と思っていたそうですけど、そのうちなんとかパチンコで勝てるようになって、暮らしていけるようになった、という感じですね。

――パチプロみたいな感じですか?

テスタ そのときは、実際にそうだったと思います。でも、大変でしたよ。前日の夜は欠かさず下見に行っていたし、朝は必ず並んで、朝10時から夜11時まで台の前に座って打っていました。やっぱりそれくらい徹底しないと勝てない世界なので。