「雷がひっきりなしに落ちてきた」
すぐに対処しようとしたが無理だった。立会道路の500mほど「下流」に品川区立の「荏原南公園」がある。ここにはいつ誰が使ってもいいように区が土嚢を置いていたが、取りに行けるような状態ではなかった。「雷がひっきりなしに落ち、怖くて外に出られたものではありませんでした」と田辺会長は振り返る。無理をして公園に向かったとしても戻って来られなかっただろう。「立会道路は川のようになって、道路に面した建物は浸水してしまいました」。
自然の川は谷になった場所を流れる。立会川も地下化されたとはいえ、周辺より低い場所が多い。ハザードマップでは暗渠の一帯が浸水想定区域とされていて、品川区は「おおむね想定されている地域で被害が確認された」としている。
「やっぱり水は低いところに集まるんだな」「でも、あれほどのスピードで浸水したら何もできない」と田辺会長と内藤副会長は口々に話す。
どうすれば備えられるか。「降り始めたと思ったら、見る間に急変するので、これまでの常識は通用しません。あらかじめ自宅に土嚢を置いておくぐらいしか考えられないですね」と2人は顔を見合わせる。
川の存在を知らない住民も
地元に住むなら、せめてそうした地区だと知っておくことも重要だろう。しかし、「立会川が暗渠になってから長い年月が経ちました。ワンルームマンションが増え、通勤のために住んでいる人も多いので、よもや地下を『川』が流れていようとは想像もしていない人がいます。一方、町会は組織率が50%を切るなど、地域のつながりはどんどん薄れています。リスクを伝えようにも難しい。せめて高齡者がいる家は把握しておきたいと思っても、敬老の日の記念品を渡す対象者を探すのに苦労しているのが実情です」と2人はため息をついた。
不幸中の幸いだったのは、雨は夕方には収まり、地下河川からの排水で浸水がすぐに解消されたことだった。
多くの課題を残しつつも、表面上の被害は見えなくなった。
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