波紋を呼んだメジャー各球団に出した「宿題」

――今の日本のドラフト制度では選手が行きたいチームを選べません。自分が野球をする場所を初めて自分で選ぶ経験でした。

「野球人生でいえば、2度目です。中学3年の時も、いくつかお話をいただいて、中には花巻東のような名門校もありましたが、自分の意志で、特に強豪校ではない県立の大船渡高校を選びました。自分で決める責任感や楽しさを、その時も感じました。今回はそれよりもはるかに大きな決断でしたが、親にも兄弟にも相談することなく、最後は自分一人で決めました」

大船渡高校時代

 “自分一人の決断”に至るまでには紆余曲折があった。交渉期間中、メジャー各球団に出した「宿題」も波紋を呼んだ。〈昨シーズン、日本でなぜ速球の平均球速が落ちたのか。その原因を突き止め、二度と起きないようにするためのプランを提示してください〉。実際、昨季の自己最速は162キロと、一昨年に出した165キロに及ばず、ストレートの平均球速は159キロから3.1キロ、落ちていた。

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――あの宿題は、佐々木選手の発案ですか?

「そうです。代理人やトレーナーらと話し合っている中で、思いついたアイディアです。といっても、スピードアップのために何をどうしていいのか分からないお手上げ状態で、アドバイスが欲しくて出したわけではないんです。僕の中で原因はこうだから、こうすれば良くなるという“解”がまとまってきたので、それに近いアプローチをしてくる球団はあるかな、と」

――自分でスピードが落ちた原因を分かっている?

「実は昨シーズンが始まる前のキャンプの段階から、自分の中で“おかしいな”と思っていたんです。別にフォームをいじったわけでもなく、調整はしっかりできているにもかかわらず球速が上がってこない。シーズンが始まれば上がってくるかな、と思ったけど、そうならない。自分でもどこかがおかしいな、と焦りを感じていました。

 ただ、シーズン中にフォームをいじるのは極めて難しい作業なので、細かなチャレンジはしつつも“これはオフに本格的にやり直さないといけないな”と思っていた。原因は、分かってみれば結構簡単なことなんです。僕は上半身に筋肉をつけるような筋トレはほぼやりません。下半身はやるんですが、特に昨年は、ウェイトの重量をあげて、下半身の筋力をアップさせた。その筋肉の付け方が、今振り返れば間違っていた」

――どういう意味ですか?