「元々僕は、歩くときもやや内股で、骨盤が前傾して、すっと立っているんです。それが特徴で、良い投球フォームにもつながっていたのに、逆の動きになるような筋肉の付け方をしてしまった。内股だったのが、外股までいかないのですが、真っすぐになり、前傾していた骨盤も後傾気味になった。それが球にスピードが乗らないメカニズムにつながっていた」

――その部分を修正すれば、球速を再びアップできる?

「そうですね。去年、1年間、違うフォームでやってしまったので、何も考えず自然に前の状態に戻ることは難しいでしょうね。今は意識しながら投げていて、去年の同じ時期よりは、いい状態にあると思います」

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「僕は元々、高校で野球をやめるつもりだった」

――さきほど、野球人生で“2度目の選択”とおっしゃった。1度目はなぜ、トレーニング施設やコーチに恵まれているわけでもない大船渡高校に?

「理由は2つあります。僕は元々、高校で野球をやめるつもりだったんです。だから普通科で勉強にもきちんと力を入れている高校に行き、野球推薦ではなく勉強で大学にも行きたかった。一応、あの地域では一番頭のいい学校なんですよ(笑)。大学を出てサラリーマンになって、っていう普通の生活を夢見ていたので。

 もう一つは、例えば花巻東のような強豪校に行った場合、大谷(翔平)さんの前例もありますし、こういう成長曲線を描いていくんだろうなという将来像が想像できた。そのレールをなぞって粛々と実現させる“作業”になっちゃうような気がして……でも、大船渡に行った場合、イメージが全然つかなかったので、そこが面白いなと。強豪校と比べると、選手個人に任されている部分が大きい感じがありました。中学までいろいろ経験して、野球に関する自分なりの考え方も出てきた中で、一番自由にできるのは大船渡だなと。どうなるかわからないけど、うまくいけば、想像通りではなくて、自分でも想像もつかないような選手になれるかもしれないと思ったんです」

――実際、部活の時間が終わった後に、いったん帰ったふりをして仲間とグラウンドに戻って監督に内緒で練習していたとか。独特の足を高く上げるフォームも自分で作り上げた?

「ユーチューブで、ダルビッシュ有さんや、大谷さんなど、自分と身長が近い投手の動画を目がかすむくらい何度も何度も見ました。足を高く上げるのは、スピードを出すためではなく、コントロールを良くするためなんです。毎回上げる高さが違うと、リリースのタイミングやポイントがずれていく。だったら、毎回、これ以上あげられないところまできっちり上げきったほうが、一定のタイミングで投げられるので」