逮捕前に堂々とインタビューに応じた人物もいた。カミンスカス操・受刑者。当時、我々はカミンスカスが事件に関与しているという情報を入手し、早い段階で単独取材を行っていた。本当に事件に関わっているのか、その真相を問うたが、一貫して否定していた。

「僕が書類作ったもの、一つもないし、本人と買い主さんが直接やっているわけだから、ただ立ち会っているだけですね」

当時インタビューを受けるカミンスカス操・受刑者 ©NHK

記者「だますというか詐欺だという認識はもちろんなかった?」

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「もちろんないですね」

 大手ハウスメーカーとの交渉の場にいたことは認めたが、取り引きは正当なものと認識していたと訴えていた。その後、カミンスカスがフィリピンへと出国するという情報を得て羽田空港に向かい、捜査が迫る中、出国する姿もとらえた。警察が逮捕するのに最も時間がかかった人物だった。懲役11年の有罪判決を受け刑務所にいるカミンスカスと、この夏、手紙のやりとりをすることができた。そこには「カミンスカス主犯ストーリーにされた」「私になすりつけられた」との記述。かつてと同様、無実を訴え、自分は他の人物の指示に従っただけだとした。1つ気になったことがあった。当時、事件に関係していたとする複数の名前が挙げられていたことだ。中には逮捕されていない人物もいる。

警察が事情を聞いたのは150人以上

 地面師とは一体何者なのか。事件はどのように引き起こされたのか。その内実に、まだ未解明な点があるように思えた。我々は、グループの周辺にいた人物や当時の捜査関係者などに改めて取材を行った。

関係者たち(捜査関係者への取材などから再現) ©NHK

 その中で、過去の捜査資料を分析すると、警視庁が事件について150人以上から事情を聞いていたことが新たに分かった。逮捕・起訴された10人と逮捕されたものの不起訴になった7人。それ以外にも、被害企業である積水ハウスの関係者や、直接積水ハウスとの取り引きと関わりをもたない不動産関係者の名前。中には、弁護士や司法書士なども含まれていた。地面師グループは、こうした人物たちとどのように接点をもっていたのか。独自取材で、解き明かすことにした。