駅ホームから見える3つのトンネル

 田浦駅東側の七釜トンネルは、3つの口を開けている。なんでもそれぞれ建設された時代が違うらしく、中央のトンネルが横須賀線が開業した明治時代のもの。右側が横須賀線が複線化した大正時代。そしていちばん左のトンネルが、昭和に入ってから貨物線のために新たに造られた。

 

 最も新しいトンネルが一番早く使われなくなってしまったというのは、何の因果だろうか。

 かくして1998年に貨物線は廃止され、道路の整備と共に少しずつ痕跡が消えていき、残りはアスファルトに埋まったいくつかのレールや平面交差ばかり、というわけだ。かろうじて残っている痕跡も、そう遠くない将来に消えてしまうのかもしれない。

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 ただし、平面交差は珍しい。そういうわけで横須賀市はその部分だけは保存する方針だという。

 戦争末期に現れて、活躍期間の大半は戦後になってから。それでもこの町が海軍の町だった時代の面影を伝える、貴重な軍事遺産のひとつといっていい。

防衛省の新施設も建てられる予定

 貨物線の引き込み線が伸びていたトンネルを歩いて抜ける。廃線跡に平行する道路は、倉庫群の中ということもあってか大型トラックの往来が目立つ。

 トンネルを抜けても海上自衛隊の施設が待っているあたりは、ザ・横須賀だ。

 

 その脇にある大きな空き地は2019年まで横浜DeNAベイスターズの練習場だった。ベイスターズがまだ大洋ホエールズだったその昔、親会社の大洋漁業がこの場所に倉庫を持っていたことから、練習場になったという。

 ベイスターズが去ったあと、ここには防衛省関連の施設ができるのだとか。

 

 トンネルの町・横須賀は、廃線ともどもやっぱり軍港都市なのである。

撮影=鼠入昌史

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