文春オンライン

連載世界経済の革命児

グーグル元副社長はホワイトハウスで何を実現したかったのか

メーガン・スミス (米国チーフ・テクノロジー・オフィサー)

2017/01/05

source : 文藝春秋 2017年1月号

genre : ニュース, 経済, 国際

メーガン・スミス氏(Photo:aflo)

 グーグル時代は、シェリル・サンドバーグ(現フェイスブック最高執行責任者=COO)、マリッサ・メイヤー(現米ヤフーCEO)と並ぶ女性ヴァイス・プレジデント(VP=副社長)として活躍した。LGBT(性的マイノリティー)であることを認めており、同僚によると「おそらく多動症」。米国社会のダイバーシティー(多様性)の象徴だ。

 マサチューセッツ工科大学(MIT)で機械工学を専攻。アップル、グーグルなどで抜群の実績を残し、二〇一四年にオバマ政権のチーフ・テクノロジー・オフィサー(CTO=最高技術責任者)に就任した。

 会議でじっとしていられるのは十五分が限度。遅れて入ってきても瞬時に議論の本質を掴み「この問題の課題はここ。解決策はこう。この方向で検討して」とまくし立て、慌ただしく去っていく。残された人々はあんぐりと口を開けて彼女の背中を見送るのだが、ほとんどの場合、その指摘は正鵠を射ている。

ADVERTISEMENT

 大の日本贔屓でも知られる。

 アップルは一九九〇年、今のスマートフォンの前身とも言える個人向け端末「ニュートン」の開発に乗り出した。ニュートンを生み出すには日本のエレクトロニクス技術が必要だったため、アップルは松下電器産業(現パナソニック)、NTT、ソニーなどに提携を呼びかけ、各社は「ゼネラル・マジック」に共同出資した。スミスは、アップル側の担当者として同社に出向し、数年間を日本で過ごした。

 ちなみにこの会社には、後にグーグルのスマートフォン用基本ソフト「アンドロイド」の開発者となるアンディー・ルービンも籍を置いていた。ルービンとスミスは一時期、グーグルでVPとして机を並べた。

 グーグル時代の功績でもっとも有名なのは、日本のスマホ利用者にも馴染みの深い「グーグルマップ」の原型を作った衛星地図ベンチャー「キーホール」を買収したことだろう。検索のグーグルが、サービスを多角化させるきっかけを作った。

 キーホールの創業者は、後に「ポケモンGO」のナイアンティックを立ち上げた。優秀な起業家を見出すスミスの眼力には定評がある。

 メガネ型のディスプレイ「グーグル・グラス」や、「自動運転車」の開発に先鞭をつけたのもスミスだ。

【次ページ】

関連記事