文藝春秋が今夏実施した大学生向け1dayインターンシップに、商社マンとして働くかたわら『高宮麻綾の引継書』で作家デビューした城戸川りょうさんが登場。冒頭で担当編集者・川村由莉子と作家デビューの裏話や、小説家と編集者の関係性について語り合ったのち、その後のインターンシップ本編では20名の大学生インタビュアーが登場。小説世界や作家業に関する質問を投げかけた。異色の経歴の人気作家が、悩める就活生たちに語った「仕事と幸福」に関するメッセージとは。
「異例のデビュー」から生まれた作品
司会:今も現役商社マンとして勤務しながら作家としても精力的に活動している城戸川さんですが、デビューの仕方はかなり異例だったんですよね。
川村:そうですね。デビュー作『高宮麻綾の引継書』は松本清張賞の最終選考に残って高評価だったのですが、残念ながら落選。ところが、あまりの面白さに文春の中から「落選はしたけど、絶対本にした方がいい」という声がたくさん上がって、デビュー決定という。
城戸川:選考会当日、電話口で「残念ながら……」の「ざ」の「z」が聞こえた瞬間に(あ、これ終わった……)と思いました(笑)。その後、携帯がまた震えて、文春から「一度会えませんか?」とお誘いがあった。
文藝春秋に着いたら川村さんが「この本を読んで、この主人公の麻綾は私だと思った」と伝えてくれて。「別冊文藝春秋」編集長も「この本は今、出すべきです」と言ってくださって……。人生がガラッと動いた1週間でしたね。
「完全に舐めてました」作家と会社員の二足のわらじ
司会:その日から、会社員としての生活に作家生活がプラスされたわけですが、忙しくありませんでしたか?
城戸川:いや、もう、ちょっと舐めてましたね。「二足のわらじでやっていきます!」みたいなことを言ってたんですけど、正直めちゃくちゃ大変で。
今どういう風な生活をしているかというと、朝6時半から開いてるドトールで、2時間から3時間ぐらい書いて、出勤して、昼休みにちょっと書いて、また午後仕事して、夜書いて、土日も書いてみたいな感じで。「城戸川りょう」の時間と「会社員」の時間で全部終わっちゃうので、「本当の私はどこに行ったの?」みたいな感じです。そんな大変さも含めてやりがいはすごくあって、今はとても楽しく小説の仕事も、商社の仕事も頑張っています。

