搬送されたその日に切断

――そもそも電撃性紫斑病はかなり珍しい病気だと聞いています。すぐに診断名がついたのでしょうか。

久多良木 僕って本当に運がいい人間でして。おっしゃる通り、この病気は宝くじに当たるくらいの確率で発症する珍しい病気なんです。でも、救急で運ばれて僕を担当してくださった先生が、それまで電撃性紫斑病の患者さんを3人診た経験がある先生だったので、僕の症状を診てすぐわかったみたいです。

 

 電撃性紫斑病は全身の血流が阻害され、末端に血が届かなくなって手や足の先から壊死が進行する病気です。手足を切断するケースは珍しくありません。

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 僕も搬送されたその日に、両足の足首から下と、両手の第一関節から上を切断することになりました。

――意識がない状態で、手足を切断したということですか?

久多良木 命を守るための処置ということで、妻が「切断します」と書かれた同意書に署名してくれました。

 僕は、ほかの電撃性紫斑病の方と比べて体で残ってる部分が多いんですけど、担当の先生からは初動の治療が早かったのも一因だろうと聞いています。

すい臓がんも宣告された

――救急搬送されてからの10日間は意識がなかったと伺いました。目を覚ました時の状況は覚えていますか?

久多良木 もう、わけがわからなかったですね。起きたら全然知らない部屋にいて、妻は泣いてるし、子どもたちは床にうずくまっているし。ベッドの周りは機械だらけで、その中に僕がポツンと寝ている状態でした。

 その日のうちに医師が来て、病名や体の状態について説明がありました。

 目を覚ました時点ですでに手足は切断されていましたが、その後も末端から壊死が進んできたので、結局全部で3回切断しています。1回目は救急搬送された日、2回目は病気発症から1カ月後に両足の膝から下を切断、3回目は両手の指で、なるべく残せる部分は残して切断しました。

手足を切断した直後の久多良木さん(本人提供)

――それは大変ですね。病気は電撃性紫斑病だけだったのでしょうか。

久多良木 発症からの2年間で数多くの病気に見舞われました。侵襲性肺炎球菌感染症、敗血症性ショック、脳内出血が2回、心臓・腎臓・肝臓の多臓器不全、スチル病(指定難病)、原因不明で3か所の(すい)腫瘍、サイトメガロウイルス感染症、脾臓低形成に伴う脾臓の消失、血球貪食症候群……よくもこれだけ次々と出てきたものだと思います。

 さらに昨年、すい臓にがんが見つかりました。がんの摘出に先立って、左の副腎を全摘して、胃の一部分とすい臓の3分の1くらいを切っています。

 今はまともに動いているのは心臓と肺と腸くらいですね。感染症にもすごく弱い体になりました。