体重が35キロ減で“骨と皮だけのような状態”に

――転院するまで1年半もかかったそうですね。

久多良木 先生から「これ以上良くなることもないけど、悪くもならないだろう」と言われて、やっと転院の話が出てきました。

 そこからの1か月くらいで、急に体の状態が良くなってきて。流動食だった食事が腎臓病食に変わりました。といっても、ほんの2、3キロほど体重が増えた程度なんですけどね。

ADVERTISEMENT

 発症前は身長約180センチで体重は75キロほど。むくみで一気に20キロくらい増えた後に、むくみが引いてから70キロくらいになり、そこから1年間の寝たきりで40キロ後半まで落ちました。

 入院前に比べると35キロくらい体重が減っていて、骨と皮だけのような状態だったと思います。

病院での久多良木さん(本人提供)

――35キロ減は壮絶ですね……。ところで、転院された時期はコロナ禍と重なっているように思うのですが、ご家族とは面会できたのでしょうか。

久多良木 それが、意外な場所で話せたんです。僕の病室の裏には、ほんの3メートルほどの距離に段々畑があって、畑のおいちゃんとよく病室の窓越しで喋っていたんです。

 そのおいちゃんが本当にいい人で、娘たちが来ると「ここにお父さんおるけ、ここで話してこい」と声をかけてくれました。

 娘たちは毎日のように畑に来て窓越しに話せましたし、来られない日はテレビ電話で顔を見ながら話せました。おかげで、ずっと寂しくならずにすみましたね。

退院してからの方が大変だった

――リハビリでは家事の練習もされたそうですね。

久多良木 入院するまで家事を一切やってこなくて、お米も研いだことがないようなダメ夫でした。退院後は僕が家事をやることになっていたので、ここにきて一から覚えた感じです。

――その後、家に戻られてから苦労はありましたか。

久多良木 洗濯や掃除など一通り覚えて、義足で歩けるまで回復して退院したので、気持ち的には案外落ち着いて帰ってきました。でも、いざ家で生活すると、想像の倍以上の大変さでしたね。

退院直後の久多良木さん(本人提供)

 病院は環境が整った状態でリハビリをするけど、家の中は障害物だらけ。子ども部屋を掃除しようとしたら、まるで僕の侵入を阻むかのように床に物が散らばっている。

 もともと将来を見据えて家を作っていて、平屋で車椅子が通れるように通路を広くしていたんです。だけど、義足で立っていると壁が遠すぎて手をつきにくいし、立ったまま洗濯物を畳むだけでも一苦労。自分がこの体になってから初めてわかったことがたくさんありました。