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診療報酬の問題、専門医不足の問題、確かにあります。
でも、それ以上に「緩和ケアは終末期のもの」「がん治療が終わってから」という固定観念が、緩和ケアの提供側にも残っているのかもしれません。
ただ、変化の兆しも見えています。私の病院では、他院で治療中の患者も積極的に受け入れています。そして実感するのは、早期から関わることで、患者の人生が確実に変わるということです。
先述の田村さんは今、月1回の通院を続けています。
「痛みもコントロールできて、不安も和らぎました。先月は家族と海外旅行にも行けたんです」
1時間かけて通院する価値がある。
そう言ってくださる田村さんの笑顔が、早期緩和ケアの意義を物語っています。
でも本来なら、どこの病院でも、当たり前に受けられるべきものです。
緩和ケア外来は、大病院だけのものでなく、専門知識を持つ開業医でも十分可能です。かかりつけの医師が将来的に訪問診療まで行えれば、診断時から看取りまで、切れ目のない理想的なケアが実現できるでしょう。
緩和ケアの門は、全ての患者に開かれているべきです。
私たち緩和ケアの提供側が、まずその壁を壊していかなければなりません。
廣橋 猛(ひろはし・たけし)
永寿総合病院がん診療支援・緩和ケアセンター長、緩和ケア病棟長
2005年、東海大学医学部卒。三井記念病院内科などで研修後、2009年、緩和ケア医を志し、亀田総合病院疼痛・緩和ケア科、三井記念病院緩和ケア科に勤務。2014年から現職。病棟、在宅と2つの場での緩和医療を実践する「二刀流」の緩和ケア医。「周囲が患者の痛みを理解することで、つらさは緩和できる」が信条。日経メディカルOnlineにて連載中。著書に『がんばらないで生きる がんになった緩和ケア医が伝える「40歳からの健康の考え方」』(KADOKAWA)がある。
永寿総合病院がん診療支援・緩和ケアセンター長、緩和ケア病棟長
2005年、東海大学医学部卒。三井記念病院内科などで研修後、2009年、緩和ケア医を志し、亀田総合病院疼痛・緩和ケア科、三井記念病院緩和ケア科に勤務。2014年から現職。病棟、在宅と2つの場での緩和医療を実践する「二刀流」の緩和ケア医。「周囲が患者の痛みを理解することで、つらさは緩和できる」が信条。日経メディカルOnlineにて連載中。著書に『がんばらないで生きる がんになった緩和ケア医が伝える「40歳からの健康の考え方」』(KADOKAWA)がある。
