がん患者はさまざまなつらさを抱えている。軽減するためには何が必要か。永寿総合病院がん診療支援・緩和ケアセンター長の廣橋猛さんは「早期からの緩和ケアで、患者の人生は変わる。本来ならどこの病院でも当たり前に受けられるべきものだが、十分に広まっていないのが現実だ」という――。
※本稿は、廣橋猛『つらさを抱える患者にできることはもっとある 緩和ケアをポジティブに変える本』(日経BP)の一部を再編集したものです。
抗がん剤治療中でも緩和ケアはできる
先日、あるがん患者さんからこんな相談がありました。
「早めに緩和ケアにかかりたいと思って、主治医に相談したのですが、まだ抗がん剤治療をしているから早いよって言われて、紹介状を書いてもらえなかったんです」
インターネットなどで情報収集する患者が増えた影響でしょうか。最近では早めに緩和ケアを受けたいと、自ら希望される方が少しずつ目立つようになってきました。それはとても良いことです。
しかし、いざ患者さんが主治医に緩和ケアへの紹介状を書いてほしいと願い出ると、「緩和ケアなんてまだ早いですよ」と許可してくれないことがあるのです。
これ、定期的に聞く話なので、決して、まれなことではないのでしょう。
こういうとき、私の病院では紹介状なしでも診療を受け付けていますが、本来なら必要のない苦労です。そもそも治療医自身が「緩和ケア=末期のもの」「緩和ケアは治療を終えてから」と誤解しているのが見え見えです。
患者にとって主治医の影響はとても大きい
一般の患者さんが緩和ケアについてよく知らない、もしくは間違ったイメージを持つことはやむを得ないと思います。しかし、医療者がこういった誤解を持っていたら、その誤ったイメージは患者に伝染してしまいます。患者にとって主治医の影響はとても大きいのです。
ですから、たとえ患者が、なんとなく緩和ケアに怖い印象を持っていたとしても、主治医が「不安や痛みなどがあれば、緩和ケアをいつでも受けられますよ」と言ってくれれば、患者の考えは変わっていくはずです。
