忙しい外来で、これら一つひとつに丁寧に耳を傾けるのは容易ではありません。だからこそ、がん治療と並行して専門家が関わる早期からの緩和ケアが必要なのです。

今、ほとんどのがん治療は外来で行われています。入院中は緩和ケアチームによるサポートを受けられますが、早期からの継続したサポートという意味で必要なのは、緩和ケア外来なのです。しかし残念ながら、日本では、患者が希望したとしても、緩和ケア外来を気軽に受診できる環境は整っていません。

2つの緩和ケア外来にある「高い壁」

現在、緩和ケア外来は大きく2つのタイプに分けられます。

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そして、どちらにも高い壁があるのです。

【がん診療連携拠点病院の緩和ケア外来】

がん治療を行う病院に、緩和ケア外来の設置は義務付けられています。しかし実態はどうでしょうか。

週1回、それも午後だけの枠の外来
専門医不在で、がん治療医が片手間に診療する外来
自院の患者しか診ない“地域に開かれない”外来

田村さんの大学病院も、まさにこのパターンでした。看板はあっても、中身が伴っていない。地域の緩和ケアのセーフティーネットとは、とても言えません。

「もう少し悪くなってから来てください」

【緩和ケア病棟併設の緩和ケア外来】

こちらはもっと深刻かもしれません。

「がん治療が終わってからでないと受診できません」
「入院相談だけで、薬の処方はしません」
「まだ元気そうなので、もう少し悪くなってから来てください」

こんな対応をされるケースが少なくありません。

もちろん、全ての緩和ケア外来にこういった壁があるわけではないのですが、一部であっても緩和ケアの提供側が、自ら門を閉ざしているのです。

せっかく患者側からの希望が少しずつ増えているにもかかわらず、病院側や緩和ケア提供側の問題で、十分に患者の期待に応えきれていない現状が、まだまだあるのです。

変化の兆しは見えている

なぜ、早期からの緩和ケアが広まらないのでしょうか。