特にがん患者に対する緩和ケアでは、主治医からの説明のタイミングは非常に重要だと感じています。抗がん剤などによる積極的な治療の限界を迎えてから緩和ケアについて切り出すと、当然悪いイメージで捉えられてしまうでしょう。
もう少し前から、できれば治療を開始するタイミングから主治医の声掛けがあるだけで、患者は「緩和ケア=末期」という間違ったイメージを持つことなく、受けることができるのではないでしょうか。
若い医師ほど誤解が少ない
一方で、医学教育の賜物なのか分かりませんが、治すだけでなく、治らない患者にどう関わればよいか、ということに興味を持つ若い医師が増えていると実感しています。
私の病院でも、決して緩和ケアを専門にしたいわけではないけれど、必要なスキルだからと、苦痛緩和のための薬や患者・家族との関わり方について学びたいと希望する研修医が増えています。彼らは訪問診療にも同行し、在宅医療の雰囲気を感じてくれています。
なるほど、研修医の方がよく分かっているな、と思うのです。緩和ケアを自分でもやりたい、やらなければならないと、必要性を理解してくれているのです。
というのも、緩和ケアに対する医療者の誤解として、日ごろからもう一つ感じていることに「特別視」があります。「緩和ケアは特別なもので、一般の臨床医がするものではない、できることではない」といった誤解です。
よく院内外の医師から「緩和ケアをお願いします」という紹介状が届くのですが、お願いしますではなく、一緒にやろうよって思うのです。治らない病を抱える患者の苦痛を緩和する役割は、関わる全員にあるはずです。
これからの過ごし方を話し合うのも緩和ケア
困っている患者に対して何とかしてあげたいと思い、何らかの行動をする行為は全て緩和ケアです。必要に応じて専門家が緩和ケアを行いますが、それ以前に、通常の診療やケアにおいて、全ての医療者が緩和ケアの視点を持って関わることは基本です。