韓国や台湾にも抜かれた「1人当たりの名目GDP」

 GDPは国単位なので、人口が大きい国は大きくなるのは当然で、実際の国民の生活にとって重要な指標は1人当たりの名目GDPである。1990年、日本は、世界の第8位であった。1995年には第6位と、1990年代の終わり頃まで、日本の1人当たりの名目GDPは世界のトップクラスを維持していた。具体的には1990年のアメリカの1人当たりの名目GDPは2万3848ドル、日本は2万5809ドル、1995年は円高もあってアメリカのそれは2万8671ドルで日本は4万4210ドルでアメリカをはるかに凌駕していた。

 それが2021年にはアメリカは7万1257ドル、日本は4万161ドルと日本の1人当たりの名目GDPは全く増えていないかむしろ減っている。最近では韓国や台湾にも抜かれる始末で、2024年のそれは、日本3万2859ドル、台湾3万3234ドル、韓国3万6132ドルで、世界の順位は日本39位、台湾37位、韓国33位で、東アジアの中でも、日本の凋落の速度は凄まじい。

平均賃金も伸びず、庶民の暮らしは苦しくなるばかり

 平均賃金について見るとOECD(経済協力開発機構、加盟国38か国)の平均は2022年度5万3416ドルで、日本のそれは4万1509ドル、加盟国中25位である。1991年の平均賃金を100とすると、OECDの平均は2022年133で、日本のそれは103と、世界の平均賃金が30年余りで33%増えたのに日本のそれは3%しか増えていない。日本の物価はデフレとはいえ30年余りで11%上昇したので、賃金の上昇はデフレでも物価に追い付かないのである。庶民の暮らしは苦しくなるばかりだ。

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 国力の衰退は円が弱くなって円安が進んだことからも明らかで、1995年は円高で、4月に史上最高値を更新した時は1ドル79円75銭であった。1990年代後半から110円台になり、2011年10月に75円32銭の史上最高値を付けた。2014年頃から2021年まで110円前後で落ち着いていたが、2022年以降急激な円安が進み、現在は140円台である。円が安くなると外貨の価値が上がり、日本へ旅行する外国人が増えてくる。いわゆるインバウンドだが、外国人旅行客が増えるということは日本が衰退してきた証拠で、喜ぶべきことではない。観光は生産力の向上にはさして寄与しないので、国力の向上にもあまり役に立たない。円が安くなると輸入品の価格が上がり、物価を上昇させる原因になる。

 2025年になって、賃金は上がらないのに米の価格も野菜の価格もどんどん上がり、日本はスタグフレーション(景気が停退して賃金が上がらないのに物価が上がること)の様相を呈してきた。このままの状況で、大震災が起これば、庶民は食べ物もエネルギーも入手できずに、生活苦に直面することは必定である。それまでに何とか、日本の生産力を上げて国力を回復したい。そのための方途はあるのか。