自傷は「死にたくないからやっている」

──隠れてでも自傷してしまう?

村松 そうです。〈隠れてやる〉とは「自傷はやめた」と言いながらこっそりやる。あるいは服で隠れる部分、たとえば二の腕やお腹、太ももなどを傷つけたりします。〈離れる〉とは、うるさく言う人を避けることです。助けてほしくて病院に行ったのに、そこで怒られたらもう行きたくないですよね。

 だから、自傷の原因そのものが解決しない状態で、周りが「体を傷つけるのはやめなさい」と言うのは厳禁なんです。昔よく言われた“ダメ、ゼッタイ”は、ご本人を追い詰めてしまいます。

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──どうすればいいのでしょう。

村松 自傷をいきなりやめるのではなく、回数や強さを少しずつ減らしていく、段階的なアプローチが効果的だと思います。

「自傷をやめたいけどやめられない」のは、痛み依存症といってもいいかもしれません。アルコールやニコチン依存症と一緒です。ときどきやってしまうことがあるとしても、徐々に減らすほうが結果的に近道になるケースは多いと思います。

──難しいですね。

村松 一般の人に理解してほしいのは、自傷は「死にたくないからやっている」ということです。アルコールやタバコを生きる支えにする人がいるように、自傷を繰り返す人にはそれが「死なないために必要なもの」の場合があります。それを失うと、本当に生きていけなくなる可能性があるんです。

 

──本当の死に向かってしまう?

村松 そうです。自傷を繰り返す人にはいつも「消えたい」「いなくなりたい」など、死につながる虚無的な考えがあります。だから「自傷しているときのほうが、普段より死から遠ざかっている」といえるほどです。それを取り上げると、頭の中が死ぬことでいっぱいになってしまいます。

 当事者ご本人との関係性にもよりますが、周りにいる人は「ムリにやめさせないこと、探ろうとせず話を聞くこと、傷の手当てを続けること」が大切なんです。

次の記事に続く 「なんだ、このありえない傷口は?」美容整形の傷あとに悩む女性を見続けてきた医師(50)が語る、美容医療の問題点と医者を選ぶ“最低条件”

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