「キレイになりたくて大金を払ったのに」「もう誰にも会いたくない」形成外科医の村松英之さん(50)の元には、美容整形の術後の傷あと相談をする患者が増えている。
「確かに“こんな傷あとありえない”と思うケースもあるんです」と話す村松さんに、美容医療界で急増する《直美》問題について聞いた。(全4本の4本目/最初から読む)
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──村松さんのクリニックには「美容整形の傷あとを治したい」という患者さんも来るそうですね。
村松 2年前に銀座院を開院したあと「美容術後後遺症外来」を設けたら、患者さんが増え続けています。一番多いのは「美容外科でホクロ除去手術を受けたら、傷あとが残ってしまった」という相談です。
最近は炭酸ガスレーザーでホクロを取るケースが多いので「メスで切るより傷あとが残りにくい」と説明する美容外科も増えているようです。患者さんはそれを信じて、美容外科ならばキレイでまっさらな肌にしてくれると期待してしまうんですね。
でもほとんどのホクロ除去手術は、レーザーでも真皮まで皮膚を削るので、何もない肌には戻りません。術後は少し凹んだり、白っぽく盛り上がった傷あとになります。
「患者さんの話を聞く限り、きちんと説明していないところも多い印象です」
──美容外科では、術後経過の説明はあまりしないのでしょうか。
村松 患者さんの話を聞く限り、きちんと説明していないところも多い印象です。それに、手術同意書に「傷は残ります」と書いてあっても、それだけでは患者さんには伝わりません。
うちではホクロ除去手術の前に「理想的にいっても、術後は“少し凹んだ白い傷あと”になります」と必ずお伝えします。
──説明不足と、患者さんの期待とのギャップが大きいんですね。
村松 そうですね。多くの方は「ホクロの傷ぐらい、長くても1~2か月で消えるだろう」と思っています。でも実際は、傷の赤みや硬さがとれるまで最低でも半年、長い方は1年かかります。それで患者さんは「いつまでも傷が消えない」と不安になってしまうんです。

