10月25日、日本未公開の台湾映画の名作・話題作を紹介する「台湾文化センター 台湾映画上映会2025」の第8回(最終回)が、台湾文化センター(東京・虎ノ門)で開かれた。この日上映されたのは、『ソウル・オブ・ソイル』(2024)。台湾で有機農業に挑む2人の男性を追い、8年かけて完成したドキュメンタリー映画で、台湾では批評・興行的にも成功を収めている。上映後には同作のイェン・ランチュアン監督がオンラインで、会場には日本女子大学人間社会学部現代社会学科の西村一之教授(文化人類学)が登壇したトークイベントが開催された。聞き手は上映会キュレーターのリム・カーワイ監督が務めた。

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『ソウル・オブ・ソイル』 

台湾南部。それぞれのやり方で病んだ土壌に向き合う、性格も手法も対照的な若者とベテランのふたり。30代の阿仁(アレン)は都市の生ゴミを堆肥にして土壌の改良を目指し、ベテランの安和(アンホー)は農業を生き方ととらえ、自然と共生する途を歩む。だが、それぞれの理想に試練が立ちふさがる。『無米楽』(2004)のイェン・ランチュアン監督の新作ドキュメンタリー映画。土壌保全の重要性を訴えると同時に、美しい映像で個性あふれる登場人物たちの対比を捉えた人間ドラマとしても見ごたえがある。金馬奨2024最優秀ドキュメンタリー映画賞ノミネート。

監督:顏蘭權(イェン・ランチュアン)/2024年/142分/台湾/原題:種土/英題:Soul of Soil/©無米樂影像工作室 

私はあなたの映画の被害者なんです

西村一之(以下、西村) 監督には20年ほど前の作品で『無米楽』という、やはり台湾の農民についての有名なドキュメンタリー映画があります。今回の『ソウル・オブ・ソイル』も、土と向き合う、土と暮らしている人たちに監督はカメラを向けていますね。

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西村一之教授(左)とリム・カーワイ監督 ©台湾映画上映会2025

イェン・ランチュアン(以下、イェン) 私自身は農業とは全く関係のない家庭に育ち、縁がなかったんですけれど、ある宣伝用の映画を撮ることになって小さな村を訪れたんです。老人と子供しかいないような農村で、3日間だけ滞在し、現地の人たちと交流する中で、農村についての映画を撮りたいという衝動に駆られました。それで3年かけて『無米楽』を撮りました。友人たちからは「そんな映画は誰も見ないからやめた方がいい」と反対されたんですが。

 今回の『ソウル・オブ・ソイル』に出てくる若い方のアレンとの出会いは、『無米楽』がきっかけでした。地方の映画祭に行ったとき、私が『無米楽』の監督だと知って、彼が非常に興奮して私のところに来まして、「私はこの映画の被害者なんですよ」と言ったんです。

 彼は『無米楽』を観て、農業をやろうと決めたと。いまは生ゴミから堆肥を作っているというので、実際に行ってみたんですが、非常に驚きました。そこはもうゴミだらけで、臭いもひどいんです。

イェン・ランチュアン監督