土に関心を持ってくれる人が増えてほしい
《いったんはうまく行くかに思えたアレンの堆肥作りは、集めた生ゴミに大量のプラスチックゴミが混入しており、それを取り除く作業に忙殺された疲労から妻が倒れてしまう。ひとりでゴミに向かっていたアレンも疲れ果てていく。アンホーが有機農法で作ったナツメは害虫に狙われやすく、大量の廃棄を出さざるを得ない。そして、2人のつくった作物はその年、期待ほど売れなかった。夢と実行力をもっていた2人は、家族の離反にも遭い、理想の有機農業から撤退せざるを得なくなっていく――。観客からは、「アレンさんが掘り返していた土が場所によってはカチカチに固まっていることにびっくりした。台湾では土壌の劣化や流出は、どの程度大きな問題として共有されているのか?」と質問が出た。》
イェン 私も台湾の土を見た時に、その硬さに驚きました。台湾の多くで農薬や化学肥料を使う農業をしていて、その影響で土がとても硬くなっているところがあります。農機具で耕せるのは20センチメートルぐらいで、その下の土は本当に硬い。このことは一般の人にはほとんど知られていません。私たちは土にとても近いようでいて、実際にはとても遠い。実際の土はもう救えないかもしれない状況にまで来ているんです。有機農業というと作物の病気には注意が行くんですけれども、その根源である土が病んでいるというところまでは、なかなか思いが至らないんですね。
私が約20年前に前の作品を作った時、大部分の人は農業にあまり興味を持っていませんでした。でも時間とともに状況は変わり、今では若い人が農村で農業をすることが増えてきています。この映画を見た人たちが、台湾の土、あるいは世界中の土に関心を持ってくれるといいと思います。
台湾映画の魅力とは
リム 最後に、お2人にとって台湾映画の魅力とは何でしょうか?
西村 いま大学で教えていると、日本の学生にとって映画は少し遠い存在になっている印象がありますが、台湾ではもっと身近で、映画が持つ影響力も強いように感じます。監督が社会的なメッセージを込めて映画を作り、それを受け止める観客がいる。それが台湾映画の魅力かなと思います。
イェン 私の作品はいつも友人たちから「そんなテーマでは誰も見てくれないよ」と言われます。この作品も8年かけて作りましたが、公開前は「見る人はいないだろう」と悲観的な意見が多かったんです。でも実際に公開してみると、驚くほど良い反応がたくさん得られました。台湾の社会の中では常に静かな関心があったんだと思います。それが映画によって結びつき、議論するチャンスが生まれたんですね。台湾映画の魅力をひと言で語るのは難しいですが、私たち創る側からすると、色々なテーマがあり、創作の自由があること。そして、そういう作品を見てくれる観客がたくさん待ってくれていることだと思います。
リム ありがとうございました。

